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奪回 6

「美穂ちゃんに何をするんだ!」
星矢が男の腕を掴む。
振り下ろされようとした短剣は、そのまま男の手から地面へ落ちた。
彼はそのまま相手を殴り飛ばした。
「星矢ちゃん」
美穂は幼馴染みが何故此処にいるのか分からず、彼の背中を見続けた。

「美穂ちゃん、もう大丈夫だ」
彼女を背に庇いながら、星矢は男の様子を見る。
相手は闘士では無さそうだし、逆に美穂の前で残酷な場面を演じたくはない。
すると星矢はいきなり大木の後ろから現れたデスマスクに、美穂を村へ連れて行けと言われた。
「でも、こいつは美穂ちゃんを……」
「悪いようにはしない。とにかくお前は彼女を休ませてやれ」
そういうデスマスクの目つきには、冷酷な光が宿っていた。
こうなると星矢としては、デスマスクがやろうとする事の方を美穂に見せたくはない。
ただでさえ彼女は、自分にしがみついて震えているのだ。
「わかった」
星矢は美穂を軽々と抱き上げて村へと戻る。
方向が少し違うように思えたが、蟹座の黄金聖闘士は訂正する気はなかった。

「……」
デスマスクは足下に転がってる短剣を拾う。
かなり重さのある短剣だった。
「お前も早く逃げた方が良い」
彼は不敵な笑みを浮かべる。
星矢に殴られた人物は驚いたような顔をした。
助けてくれるのかという問いに、デスマスクは頷いた。
「そのかわりに、この短剣は貰っておく。
ぐずぐずしていると仲間から、俺に買収されたと思われるぞ」
早く行けと言わんばかりに、デスマスクは相手を追い払う。
相手は転がるように森の中へ消えたのだった。

森の中を一陣の風が吹く。
デスマスクは強烈な敵意が消えた方向を見た。
多分、闘士と思える者は逃げた男を追ったのだろう。
「ヤツは逃げ切れないな」
蟹座の黄金聖闘士は大木の陰にいた仲間に話しかけた。
そこにいたのは気配を消していたシュラ。
デスマスクは彼に短剣を渡した。
それは青銀色の短剣で、何処か聖域に保管されている黄金の短剣に似ている。
「面倒な組織が動いているようだな」
「持久戦を覚悟するしかあるまい」
この時、二人は人間の叫び声を聞く。
「終わったな」
緊張が解けたのかデスマスクは背伸びをする。
シュラは短剣を見た後、空を見上げたのだった。