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奪回 4

瞬間移動能力を持った聖闘士たちに協力してもらって、星矢達はとある小さな村にやってきた。
「黄金聖闘士と海将軍が一緒かよ……」
邪武は深い溜息をつく。
何故なら沙織が命じたメンバーが半端ではない。
デスマスク、シュラ、アフロディーテとカノンが一緒なのである。
この一件に黄金聖闘士を投入するという沙織の判斷に、ダイダロス達の方が首を傾げた。
だが、彼女の命令は絶対だった。

「速やかに解決しなさい」

ギガントマキアを終えたばかりの黄金聖闘士たちに、沙織はこう命じた。
それは問題を瞬時に終わらせろという意味でもある。
それにしても黄金聖闘士三名、海闘士達を統括する海将軍一名、神聖衣を得た聖闘士一名、青銅聖闘士二名は、他の闘士達から見れば一人の少女を奪還するには大げさな様な気がした。

とにかく彼らは聖域が用意した旅行者のような格好をし、瞬間移動で村へやって来た。
移動手段は秘密裏に行ったので騒がれる事は無いと思うが、別の意味で彼らは目立っていた。
「どちらかというと美穂に何かあって星矢がキレたら、力ずくで止める役になりそうだ」
一緒に来た那智があっさりと答える。
当の星矢は、美穂が何処かに居るのではないかと思い、周囲を注意深く見回していた。

「顔見知りには会いたくないものだな」
デスマスクは長閑な村を見ながら言う。
「知り合いでも居るのか?」
シュラが意外だと言わんばかりに尋ねた。
しかし、彼はシュラの言葉に呆れていた。
「何を言っているんだ。
今回の一件に、俺たちが聖域を守る為にやった事を覚えている奴が居るかもしれないだろ」
教皇の命令という事で、聖域に害を成す敵の組織等を幾つも葬った。
もしかすると生き残りが、事件の背後に居るのかもしれない。
「首実検か……」
アフロディーテは腕を組む。
しかし、三人とも思い当たる節が多いのか、あり得ないことだと思っているのか該当する組織が思いつかずにいた。

カノンはと言うと、聖域へやって来たのは海皇を探す為だった。
ところが沙織にペガサスの幼馴染みを助けるメンバーに組み込まれたのである。
状況から言えば他にも黄金聖闘士はいるし、白銀聖闘士にも実力のある者はいる。
なのに何故、海将軍である自分なのかが見当が付かない。
ただ、沙織の方でもジュリアンを聖域やその付近で見かけたら保護をすると言ったので、その代わりに手伝えと言うことなのかと彼は考えた。

「とにかく村人から話でも聞く事にしよう」
アフロディーテが歩き出した時、少し離れたところで爆発音と黒煙が上がる。
「美穂ちゃん!」
ところが星矢は黒い煙とは反対方向にある山の方を見た後、いきなり駈け出した。
「猟犬が何かを見つけたようだ」
デスマスクの星矢に対する例えに、他の者たちは笑うに笑えなかった。
「我々はペガサスを追う。お前たちは今の爆発が敵の罠かどうか調べろ」
シュラはそう言うと星矢の後を追う。
他の黄金聖闘士と海将軍はというと、既に影も形もなかった。

「星矢に任せて大丈夫か?」
那智の疑問に邪武は大丈夫だと答えた。
「あいつは昔から美穂の居場所だけは見つけるのが上手いんだよ」
「何だそれは?」
しかし、邪武はそれ以上は何も言わずに、村で発生した事故現場を見に向かった。
那智もまたその後を追う。

村は突如発生した事故で、大勢の人たちが右往左往していた。