彼女が海を見ている。 星矢はその姿を遠くから見ていた。 彼女が浜辺を歩く。 (まさかこのまま居なくなったりしないよな……) 急に思い浮かんだ考えに怖くなり、星矢は慌てて彼女の許へ駆け寄る。 すると彼女が驚いたような表情で、自分を見ていた。 『こ……こんばんは……』 ちょっと驚いたような、それでいて嬉しそうな笑顔。星矢の心臓は早鐘を打ち始めた。 もっと近づいてもいいのでは……。 そんな事を考えてしまう。 星矢が彼女の両腕を掴んだ瞬間、誰かが彼の名を呼んだ。 |
「星矢!」 |
その頃、美穂はバスに乗って移動していた。 「……」 星の子学園で最初に聞いた話では、絵梨衣を連れ戻すという説明のみだった。 だが、目的地は海外だと押し切られ移動ばかりしている。 この旅の不自然さに美穂も何か変だと思い始めていた。 とにかくグラード財団の人間が一緒なのだから自分の方は何も不安なことはないが、絵梨衣を手放さないという相手の方が何か不気味な感じがしてくる。 だから彼女は早朝の移動も仕方がないと思っていたが、いきなり移動の車が故障したと言われると何かが自分の身に迫っているようで落ち着かなかった。 彼女はバスの窓から外を眺める。 護衛の青年は美穂に簡易的な地図を渡すと、とある村を指さした。 彼はそこにある小さな食堂で食事をする予定だと告げた。 |