海底神殿では海将軍と海闘士たちが忙しく海の情報を収集し報告を繰り返す。 ギガントマキアにより、デスクィーン島周辺が荒れたのである。 大地の乱れと海の乱れは表裏一体と言っても良いくらい連動する事が多い。 こういう時は太古の海妖が引きずられるように出現する事があり得るのだ。 少なくとも海洋生物が島の周辺海域に戻らないのは、問題の余波が残っているという事だった。 「シードラゴンは落ち着いたか?」 バイアンの問いにテティスは首を横に振った。 「駄目です。私ではとても近づけません」 二人はそう言ってシードラゴンが使う執務室を覗き込んだ。 そこには、怒りのオーラを立ち上らせた筆頭将軍の後ろ姿があった。 (あれはポリュデウケースだったのか?) 黒の聖域が崩れる時、カノンは何か嫌な予感がした。 最後までサガならば脱出するかもしれないが、万が一ポリュデウケースが再び主導権を持った場合は戻ってこないのではと思えた。 そう考えた瞬間、居ても立ってもいられなくなり、テティスの制止を振り切って黒の聖域に向かったのだ。 案の定、サガは動こうとせずに、その場に立っていた。 |
「何を突っ立っているんだ!」 |
向こうの言い分を言葉通りに受け取って良いのか、カノンには判断が付かない。 ただ、女神アテナには双子座の黄金聖闘士が女神ネメシスに会いに行ったとだけ伝える。 この時、彼はアイオロスもまた行方不明なのだと知らされた。 あの二人は、いったい何に関わっているのだろうか。 カノンは漠然と、何かがまだ終わってはいないと感じた。 この後、シードラゴンの海将軍は聖域に行く理由がないので、そのまま海底神殿へと戻った。 ただ、双子座の黄金聖闘士の行動に怒りが収まらなくなっていた。 普通の振りをしていると部下に対して八つ当たり以上に酷い事をしそうなので、カノンは大まかなことを命じた後は執務室に閉じこもったのである。 そこへソレントが慌てた様子で駆けてきた。 「大変です! ジュリアン様が……。ポセイドン様が部屋から居なくなりました」 これにはカノンも瞬時にサガに対する怒りを忘れた。 単に勝手な行動をする主神への怒りにすり変わっただけなのかもしれないのだが……。 |
白い世界。 靄のようなものが晴れると、彼女は何処かの神殿らしき場所の前に居た。 そこが何なのか、絵梨衣には見当がつかない。 だが、危険な場所でないことは、目の前に居る女神の存在で分かった。 『もう少し利用させて貰う』 絵梨衣は懐かしい女神の言葉に頷く。 もう今では女神エリスを怖いとは思わない。 ただ、相手の方が自分と関わり合いになりたくなさそうなのが、少し寂しかった。 |
「……」 絵梨衣が目を覚ました時、最初に見えたのは部屋の天井だった。 瞬時には自分の身に起こった事が理解出来ず、じっと天井を見続ける。 そこへ聖域の女官らしき女性が入ってきた。 しかし、絵梨衣が目を覚ました事に気が付くと慌てて部屋の外へ出ていった。 |