「これでしばらくは地母神ガイアも大人しいだろう」 |
聖域に再び朝が訪れる。 |
そしてカミュは沙織から特別な任務を与えられる。 それは人馬宮に閉じ込められた少女の救助だった。 カミュは氷付けという言葉にふさわしい十二宮と神殿を見て、言葉を失った。 朝日に照らされて建物は神々しいまでに光り輝いていたが、これでは建物自体が使用不可能である。 「これを私がやったのだな」 彼の言葉に一緒に来ていたアルデバランが頷く。 「カミュ。詳しいことはあとで幾らでも説明する。 今は人馬宮までの道を作ってくれ」 水瓶座の黄金聖闘士は、手に持っている天秤座の武器に自分の小宇宙を込める。 そして彼の一振りにより、白羊宮まで蔓延っていた水晶にも似た結晶は軽く清らかな音を立てながら霧散した。 女神の命令を聞いた時、カミュはそれが異世界で会ったエリイなのだと気が付いた。 氷河は気を失う直前まで彼女の事を気遣っていたが、神の力を背負った少年の体力は限界に近づいている。 何しろ同じ様な条件下のペガサスとアンドロメダも、脱出した直後に意識を失ってしまったのだ。 そして自分もまた、巨人族との戦いで怪我を負っている。 (だからといって、他の者に任せるわけにはいかない) 理由の一つは、氷の牢獄をつくったのは自分だという事。 もう一つは異世界で守りきれなかった少女がどうなったのか、自分の目で確認したかったからだ。 そしてカミュは二回の攻撃で、人馬宮の入り口まで氷を消滅させたのだった。 「さすがだな」 アルデバランは人馬宮に向かいながら、同胞の完璧な力配分に驚いていた。 呪術の影響下にある氷の硬度が分からないので、彼は力を抑えながら前へ進むしかないと思っていたのだ。 時間との闘いを覚悟していたのに、同胞はたった二回で目的の場所まで道どころか空間の確保までやり遂げたのだ。 「エリイはこの中だな」 この言葉にアルデバランは、カミュは少女と知り合いなのかと思った。 |