エピアルテースは自分の言葉を受け入れ、太陽と月から身を隠す場所を与えるパンドラに戸惑っているのである。 血族でもないのに異種族の自分に何故そのようなことが出来るのか。 自分が優れた種族だからなのか。 巨人族を捕らえたいからなのか。 気の迷いか。 答えが見つからず、エピアルテースの思考はグルグルと回っていた。 ギガントはそんな彼に話しかける。 「ならば、この俺と共に一つずつ勉強をしよう。 俺が色々とサポートしてやる」 巨人は頷く。 彼はギガントが自分の影響下にあるという安心感があった為かもしれない。 「では、まずは礼の行い方だ。 これをしないとパンドラ様に嫌われる」 小さな子供に話しかけるように、ギガントは説明した。 エピアルテースは人間のしきたりについてを興味を持ったらしい。 その意識は大きな体で表されていたが、縮こまりながらギガントの後ろを付いていった。 この時ギガントは自分が見た夢を思い出した。 暗い穴に落ちた自分に手を差し伸べるパンドラ。 (パンドラ様は巨人ごと自分を引き上げてくださったのだ) ならばその重さが負担にならないようにしよう。 サイクロプスの冥闘士はそう決意したのだった。 ラダマンティスはギガントがパンドラの前で片膝を付いて礼の姿勢をとった時、ようやく巨人が押さえられたのだと知った。 「ラダマンティス。ギガントが正気に戻ったぞ」 彼女が首に手を当てながら短剣を仕舞う。 「まさかお怪我を!」 ラダマンティスは慌てて、パンドラの首を見た。 「怪我はない。ずっと刃を当てていたから感触が残っているだけだ」 彼女はラダマンティスから離れると、異形の樹に視線を向けた。 「エピアルテースは大人しくしてくれそうだが、向こうはどうかな?」 葡萄の木に飲み込まれた巨人は、一見すると眠って居るかのようだった。 「エウリュトスは、このギガントがエピアルテースと共に見張ります」 彼の言葉にパンドラは満足げに頷いたのだった。 |
アルキュオネウスは次々と兄弟達の力を飲み込み始めた。 |
牡羊座の黄金聖闘士は春麗達が戻ってきたと同時に、一番目の暗黒宮に移動した。 既に女神アテナと春麗は冥闘士たちが外に連れ出してくれている。 手には天秤座の武器の一つである剣が握られていた。 「……」 先程、アルデバランも二番目の宮へ向かったが、二人とも神々の闘衣を破壊する条件の厳しさに緊張していた。 十二人全員の呼吸が合わなくてはならないとは、いくら手練れ同士でも簡単に出来ることではない。 しかも、考えようによってはタイミングがズレれば、不死身の巨人を倒せるほどのエネルギーを自分たちが食らってしまうこともあり得る。 ムウは暗黒宮の一角で、一人の人物を見つけた。 「師シオン。早くその闘衣を外してください」 そう言って彼は近づいたが、振り返ったシオンを見てギョッとした。 「それは!」 シオンは頬にかけて黒い紋様が浮かび上がっていたのである。 「ムウ。その剣で私ごと切れ」 師匠の言葉に、ムウは絶句した。 |