衝撃を食らった手を押さえながら彼は呟く。 「何故……。 師ケイローンは私を認めないと言うのか」 すると、様子を見ていたアフロディーテが静かな口調で答えた。 「それが聡明なる賢者の望みなのだろう」 賢者は自分の弟子に使わせたくはなかったのか。 それとも女神パラスに全てを託したのか。 彼はアフロディーテの言葉に沈黙する。 その重々しい静寂を破ったのはデスマスクの声だった。 「おい。こっちは許可が下りたぞ」 誰もが直ぐには何のことだか分からない。 しかし次の瞬間、彼らの目の前に一つずつ、分解された天秤座の武器が現れたのである。 |
『黄金聖闘士達に告ぎます。 神々の闘衣を破壊しなさい。 |
双子座の黄金聖闘士は次々と暗黒宮を駆け下りた。 彼の脳裏に遠い昔の事が思い出される。 女神エリスが女神アテナの教育係だった頃、護衛役に居たペガサスの聖闘士は礼節について自分に叱られるとカストールの後ろに避難していた。 その光景を女神達が笑って見ている。 サガはこれが自分の体験ではないことは分かっていた。 (これはポリュデウケースの記憶だ) 彼はその記憶を振り払い、自分の成すべき事に集中した。 |