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続々・緊迫 5

もうすぐ、女神アテナの守護者がやってくる……。

ポリュデウケースは数々の衝撃で脆くなった室内を出て、神殿の前に立った。
既に内部は巨人族の作り上げた道の影響で、異様な気が充満している。
(多分、その気というのは今まで巨人族を閉じこめていたタルタロスのものだろう)
床に自分の知らない呪術の紋様が現れた時から、彼はこうなる事を予測していた。
地母神ガイアは、巨人族の為なら地上が多少どうなろうとも構わないと考える。
彼女は子供達を平等に愛するあまり、その子供達の能力が平等ではないという事を考えないのだ。
(……)
シードラゴンの海将軍たちがどうなったのかは分からないが、タルタロスに落ちれば脱出は絶望的になる。
それは不老不死である彼にも当てはまる事。
彼は後ろに一歩下がれば二度と復活することは叶わないというのに、その場から離れなかった。

星矢は大弓を持ってひたすら神殿を目指した。
十二番目の暗黒宮で何故か紫龍達とはぐれたが、彼はそのまま前を突き進んだ。
そして彼は遂に、目的の人物を見つける。

「ポリュデウケース!」

星矢はこの時、聖域の十二宮で起こった事を思い出した。
この不老不死の神には、自分の必殺技は通用しない。
そして大地の女神達を救うには、巨人族とも闘わなくてはならない。
彼はアイオロスから託された射手座の矢を番えた。


女神パラス。私を裁いてくれ。

「どうしたら大地の女神達を救えるんだ。
教えろ。ポリュデウケース」
ペガサスの聖闘士の言葉に、ポリュデウケースは少しだけ驚いた。
武器を使わないことが信条の聖闘士が、自分に弓矢を向けているのである。
何が重要かを理解し、その為ならば自らの誇りを捨てることも厭わない。
(今、確実に目の前の聖闘士は、大地の女神達を味方に付けた事だろう)
彼は懐かしい女神の姿を思い出した。

この時、ポリュデウケースは自分の背後で何かが動いた事に気が付く。
巨大な生き物の気配。
黒い手が彼を掴もうとしていた。
「何っ」
「伏せろ!」
星矢は咄嗟に、巨人の手に向けて黄金の矢を放った。
それはポリュデウケースの闘衣の肩のパーツを砕いて、巨人の手を霧散させる。
不老不死の神はバランスを崩して後ろへと下がった。
だが、彼自身の身体がタルタロスに落ちないように動く。

(サガ!)
ポリュデウケースはこの時、肉体の主導権をもう一人の自分に取られた事を知った。
『ポリュデウケース。 私の命は既に女神アテナに預けてある。
勝手なことはさせん』
この一瞬で勝負を付けるた為に、サガは気配を隠し沈黙を守り続けたというのか。

ポリュデウケースは脳裏に光を見た。