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続々・緊迫 2

「おかしいな。誰もいないぞ」
後からやってきた星矢と氷河は、無人の宮に首を傾げた。
「先に行ったのではないか。
我々も追いかけよう」
氷河があっさりと答え、出口に向かおうとする。
「待てよ。瞬達に何かあったのかもしれないだろ!」
とは言え、誰もいないし手がかりもない。
どうしたものかと数秒程思考していると、出口の方から人の駆けて来る足音が聞こえてきた。
「星矢。氷河。
早くここを通り抜けよう」
瞬の言葉に二人は走り出す。
出口には紫龍とシュラ。
そして冥闘士たちが待っていた。
「何でシュラまでここに?」
しかし、紫龍と瞬はどう説明したらいいのか分からないと言いたげな表情をし、シュラと冥闘士たちはその問いを無視した。

再び静かになった十番目の暗黒宮で、シュラは神々の闘衣を探す。
最初の暗黒宮で見かけたものが本物ならば、この場所にも似たような場所に隠されているかもしれない。
ただ、問題もある。
一つは自分の必殺技が、今ははっきりと見ることが出来ない呪術を切り裂くかもしれないと言う事。
もう一つは神々の闘衣に対して、スフルマシュがどういう反応を示すか見当が付かない事。
(それでも邪悪な闘衣ならば、壊すのみだ)
シュラは暗黒宮の中心へと歩みを進めた。

魔鈴は瓦礫を次々と粉砕しながら、獅子座の黄金聖闘士の姿を探す。
そのうち彼女は床に大きな穴が開いている場所を見つけた。
(まさか!)
足を踏み入れた途端、その場所は大きく陥没し彼女はそのまま落ちる。

地下室と思われる場所は天井を見る限り、意外と広いように見えた。
しかし、所々崩れ落ちた柱や床などの残骸が逆に、この場所を迷路にしていた。
彼女は慎重に周囲の様子を探り、ようやく奥の方で目的の人物を見つけた。

「アイオリア」
やはり想像していた通り、アイオリアは地下に作られていた部屋に落ちていたのだ。
光の届かない場所で、彼の黄金聖衣が仄かに光を放つ。
動かない彼を見て、魔鈴は駆け寄ろうとした。
だが、アイオリアの傍には闇の中で双眸をを光らせている闇の獅子が立っていた。
彼女には黒い闘衣が生き物であるかのように見える。
ただの闘衣だと言うには、それは明らかに禍々しい。
魔鈴はその場に立ち止まる。
これ以上近づけば、血に飢えた獣のような闘衣はアイオリアの喉に食らいつく。
そんな気配を彼女は相手から感じ取った。
「……」
人を支配する性質を持った武具は、最も相性のよい闘士と判斷した人間を手放す気は無いと言うことなのか。 

そして押さえつけられている獅子座の黄金聖衣は、神々の闘衣が接触している部分で火花のようなものを散らしていた。
まるで自分を浸食しようとする敵から主を守るかのように。
だが、アイオリアは目覚める気配を見せない。
魔鈴は呼びかけることも出来ず、お互いに睨み合ったまま時間が過ぎようとしていた。