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続々・緊迫 1

デスクィーン島の地表では、尚も雨が降り続く。
空を見上げても星が見えるはずもなく、島を歩くには地表から漏れる呪術の光が頼りという状態だった。
海将軍達は一応、島の様子を確認し異常がないか見て回っていた。

彼らは海管轄ではあるのだが、水域の神々とは多少なりとも縁がある。
水を隠れ蓑に潜む者が居ないか、自主的に調査をしてた。
いきなりの大雨に、島では所々巨大な水たまりが出来ている。
「島の地図が変わるかもしれないな」
イオが目の前に出来つつある湖を見て呟く。
視覚的には真っ暗なのだが、彼らには闇の中でも存在を感じることが出来た。
「実際に大きな湖が3つに、小さいのが5つ確認できている。
ここのは、元々あった噴火口跡に水が溜まったのだろう」
バイアンは脚元を覗き込むように湖の様子を見た。
「光っているように見えるのは、この場合は呪術の影響か?」
未だに島の大地には、所々紋様が浮かび上がる。
二人は強引に連れてきた冥闘士の顔を見た。

「特に冥界の気配は感じられない」
シルフィードはウンザリした様子で答える。
その時、バイアンとイオは湖の中である種の気配に気が付いた。
「……」
「……」
二人が顔を見合わせた事に、今度はシルフィードが湖を覗き込もうとした。
「何かあったのか?」
ところが二人の海将軍たちはシルフィードの腕を掴むと、彼を湖から引き離したのだった。
「何をするんだ!」
「此処はもういい。次の所へ行くぞ」
イオの返事にバジリスクの冥闘士は納得がいかず抵抗しようとしたが、たった一人で二人の海将軍相手に勝てるわけがない。
シルフィードは次の場所へ引きずられる羽目となった。

現とも幻とも言えない世界で、シュラは静かにスフルマシュを見つめた。
自分の中にある巨大な力。
スフルマシュはオリュンポス神族にとって異形の存在である。
やり方によっては、聖域そのものを消すことも出来るだろう。
十三年前の事実をも飲み込んで全てを無に返すことも……。
そう考えた時、目の前のスフルマシュがにやりと笑った。
自分を嘲笑うかのような表情に、シュラもまた笑う。

「スフルマシュ。
例えこの手が幾千の血に染まろうとも、俺は光を守る」

異形の神は動く事を止め、じっとシュラの事を見る。
彼は構わずに言葉を続けた。
「世界を滅ぼす力は使わない。
それが自分の死に繋がろうとも……。
だから幾ら唆そうとしても無駄だ」
するとスフルマシュは奇妙な声で、
『残念ダ』
と言うと、そのまま闇の中に消えた。


十番目の宮周辺に吹き荒れていた風が、ピタリと止まる。
シュラが再び目を開けると、瞬は素早く彼を拘束していたネビュラチェーンを外した。
「スフルマシュは押さえられたのか」
紫龍の問いにシュラは簡潔に答える。
「今までの風は俺の攻撃性が具現化したものだ。
本物ではない」
先程は太古の神の名を出され今度は否定され、紫龍と瞬は状況が分からず首を傾げてしまった。