巨人ガイオーンは獅子座の黄金聖闘士と闘っていくうちに、闇の闘衣に組み込まれている技を修得した。 ここまで自分を手こずらせる人間も珍しいが、既に相手は床や壁に現れている呪術の紋様に攻撃され無事とは言い難い。 それでも立ち上がり、自分と闘おうというのだ。 この様子にガイオーンは苛つく。 なのに何故、自分はこの者の息の根を止められないのだろうか。 だが、そんな彼も太古の血族の気配を感じた時、アテナの聖闘士に構っている時間はない事に気が付いた。 巨人は、建物そのものを破壊することにより、いったんこの場から離れる事にした。 |
魔鈴は途中で会ったミロと共にアイオリアの居る五番目の暗黒宮へ向かう。 |
太古の血族スフルマシュは、威圧的な眼差しで若き闘士を見た。 しかし、彼は怯む事なくその場に座っている。 直ぐ傍に、自分たちの血族を滅ぼした者たちの眷属が居る。 太古の神は契約主である闘士に、巨人族を倒しに行くよう言った。 しかし、彼は自らの身体を拘束し、その場から頑として動かなかった。 |
「大丈夫か」 紫龍は周囲の様子を見ながら瞬に話しかける。 瞬はネビュラチェーンで両手足を拘束されているシュラを不安げに見た。 十番目の暗黒宮を取り巻く気配は、山羊座の黄金聖衣を依代にしている太古の神のもの。 スフルマシュは巨人の存在に敵意を示し暴れようとしている為、勝手に敵と判斷すると見境無く攻撃しているというのだ。 シュラからそう説明されても、紫龍達は直ぐには状況が理解できなかった。 彼は瞬に対して自分を拘束するよう頼む。 スフルマシュが妙な動きをして、これ以上仲間を傷つけるような真似をさせるわけにはいかない。 もし、太古の神が自分を操るような事を仕出かしたときは、ネビュラチェーンで自分を止めろ。 彼はそう言って、そのまま瞑想状態に入った。 相変わらず暗黒宮の周囲には、風が渦巻いていた。 外からの侵入を許さないという意志なのかは分からないが、少なくとも十番目の暗黒宮に居る闘士たちは誰一人として出られない。 今は山羊座の黄金聖闘士がスフルマシュを抑えるのを待つしか方法は無かった。 |