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続・緊迫 6

シオンのクリスタルウォールによって、巨人は春麗に近付く事は叶わなかった。
他の闘士たちも春麗も、砕かれた巨人の体は泥の壁のように見える。
「避けろ!」
シオンはそう叫ぶと、連続してスターダスト・レボリューションを放つ。
次の瞬間、防護壁は消え、泥の壁を光が襲った。
そして異様な絶叫が響き渡り、巨人は目の前から消える。
後には土塊とも言うべき残骸が残った。

実は、この意外な援軍に冥闘士たちも驚いていた。
「ミーノス様のご命令だ」
ゴードンは少々言い難そうな説明をする。
春麗はそんな彼をじっと見た。
「大丈夫か」
ゴードンに話しかけられて、春麗は少しだけ泣きそうな表情になる。
「どうした」
「あの……、私を助けようとして仲間の方が怪我を……」
やはり役に立たなかったと言われるのかと思い、春麗は涙を堪えながら話そうとする。
だが、ミノタウロスの冥闘士は眉を顰めて彼女の言葉を遮った。
「お前はちゃんと自分のやるべき事をした。
そのお前を無事にここから脱出させるのが、我々の役目だ」
彼はそう言うと、直ぐに彼女から離れる。
春麗はそれ以上何も言えなくなった。

ゴードンの説明曰く、二番目の暗黒宮ではガイオーンが何の為か暴れたらしく、無事なのは建物の外装だけ。
中は衝撃を与えると、一気に天井が崩れかねない状態だと言う。
「わかった」
シオンはちらりと春麗の方を見ると、ゴードンの言葉に頷いたのだった。


地母神ガイアは我が子グラディオーンが完全に倒される様を見て、悲鳴を上げた。
何故、グラディオーンはあのような行動をしたのか。
どう考えても、子供達は引き際というものを分かってはいない。
不意に彼女は女神ニュクスの娘神の事を思い出した。
女神エリス。競いから争いへと性質を変えた復讐者。

彼女が闘いの場を支配しているのだ。

自分も子供達も完全に女神エリスの術中にはまっている。
彼女はこちらを巧みに唆したのだ。
島に張り巡らされた呪術も、子供達を油断させるために違いない。
実際に、自分が影響を与える事が出来るからこそ、子供達を島に送り込んだりしたのだ。
地母神ガイアは残った子供達の為にも力を送り続ける。
しかし、それが子供達を滅びへと向かわせる。
彼女はどちらも選ぶことが出来ず、ただ、子供達が女神アテナと女神パラスの加護を得た闘士を倒してくれるのを願った。
しかし、その思いも今では、アルキュオネウスとガイオーンの為にはならないような気がした。