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続・緊迫 5

アルキュオネウスは大地との同化が上手くいかず、少々苛々し始めていた。
島中に広がろうとしている呪術が、自分と大地との同化を邪魔する。
そして地上付近では太古の血族が自分を見ている。

不死身の巨人は何から片づけるべきか考えた。

神殿から離れた別の場所では、違う巨人が兄弟の中で一番強いと言われるアルキュオネウスが動こうとしている事に気が付いた。
そして生意気なガイオーンが、母神に仇を成す存在を葬ろうとしている。
この時、彼の意識に何かが囁く。

『母神を心安らかにさせる栄誉は、アルキュオネウスかガイオーンにもたらされる』

闘う力を奪われていた巨人は絶望と怒りで、人間にやられた体を無理矢理再生し始めた。
彼は最後の力を振り絞って、動き始める。
ここは母神の影響下にある土地。
ゆっくりではあるが、力を得ながら体を動かす事くらいは出来る。
それに目的の人間を捻り潰すのは、巨人族である彼にとっては造作もない事だった。


三番目の暗黒宮を抜けようとした時、シオンは腕に鈍い痛みを感じた。
(……何だ?)
少し前を冥闘士の一人が春麗を抱えて走っている。
(とにかく今は、春麗と女神を安全な場所へ連れて行かねばならない……)
その時、冥闘士たちが立ち止まる。
「どうした」
シオンの問いに、冥闘士の一人が答えた。
「前方に何かが居る!」
気が付くとそこには大きなモノが蠢いている。
人外の気配。
「いったん退け!」
春麗を連れている冥闘士にそう言うと、シオンは前に出た。


巨人は目的の人間を見つけると、このまま建物ごと全てを消し去ろうとした。


「クリスタルウォール!」

「グランドアスククラッシャー!!」

ほぼ同時に仕掛けられた闘士達の技。
巨人グラディオーンはシオンの技に行く手を阻まれ、背後から仕掛けられた闘士の必殺技により、少しだけ実体化していた体を粉砕されてしまう。
グラディオーンは背後に人間が居た事に驚く。
自分たちの背後を取るなど、あり得ないと彼は思った。
そして、滅びゆく巨人は其処に、迷宮の主とも言うべき黒い牡牛を見たのだった。