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続・緊迫 3

アイオロスはヘラクレスの弓の隣に、射手座の弓を置く。
「場合によっては、いつかペガサスがやる事になるからな」
星矢と氷河は二つの弓を見比べた。
「この弓には、こういう仕掛けがあるのだよ」
そう言ってアイオロスは、手際よく射手座の弓を分解し始める。
「ええっ!!!」
星矢はあまりの事に目を丸くする。
「賢者ケイローンは非常に用意周到な方だった。
あれは心配性というべきかな」
そう言いながらアイオロスは次にヘラクレスの弓を細かく分解した。
ただ、例え射手座の黄金聖闘士でも、ヘラクレスの弓は拒絶の姿勢を見せていた。
幾度かアイオロスは指先に激痛を感じて、弓を落としそうになる。
しかし彼は黙々と射手座の弓に接続し始めた。
それはまるで最初から一つの弓であったかのように、ぴったりとはまってゆく。

「アイオロスはケイローンに会ったことがあるのか?」
星矢の問いに、氷河は何を馬鹿なと言いたげな視線を向けた。
そんな二人の様子に、アイオロスは弓を組み立てながら答える。
「射手座の黄金聖衣の所有者になると、もれなく会うことになる。
この聖衣のモデルは賢者ケイローンだからな」
星矢たちは何か誤魔化されたような気がするが、その頃には組立がほぼ完成していた。
二人の前には一回り大きくなった大弓が横たわっている。

ところがアイオロスは困ったような表情で再び弓を持つと、軸の部分を何度か突っつく。
「ここの部分が何かの衝撃で壊れたらしい。上手くはまらない」
他の所は綺麗に接続出来ているので、ますますその部分のアンバランスさが問題だった。
「仕方がない」
彼は弓を包んでいた上着を器用に交互に引き裂き始めた。
「あっ、それは!」
星矢が止める間もなく、服は細長い布となり捻られて一本の紐のようなものとなった。
そして接合の緩い場所にグルグル巻きにされたのである。
「これでいい。 この弓なら射手座の矢もヘラクレスの矢も使える」
アイオロスは星矢に弓を渡すと、壁に寄りかかりながら立ち上がった。
「ペガサス。頼んだぞ。」
星矢は大弓を握りしめながら頷く。
弓自体は二つ分の質量がある筈なのに、星矢には重いとは感じられなかった。

「ギャラクシアン・エクスプロージョン」

ポリュデウケースが必殺技を使った瞬間、神殿の内部が目映いばかりに光を放つ。
同時に発生した濁流のような気の流れに、ポリュデウケース自身もまた驚いてしまった。
「これはいったい!」
神殿内の壁に浮かび上がる呪術の紋様が強く光り、そこに居た闘士たちは壁に叩きつけられる。
この時、ポリュデウケースの耳に少女の悲鳴が聞こえてきた。
妹によく似た声は、確かに自分の事を呼んでいる。
彼は当時の状況を思い出し、反射的に妹の声がした方に手を伸ばした。