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緊迫 7

闇の中で巨人ガイオーンは感覚を研ぎ澄ましていた。
牡牛の持つ攻撃技の情報を習得したので、目的の存在を排除することは可能になった。
ところが、いつの間にかそれは二つに分かれていたのである。
何故、柔らかそうな匂いが二つに分かれたのか。
ガイオーンはどちらを先に攻撃しようか考え始めた。


八番目の暗黒宮を抜けて、星矢たちはアイオロスの居るであろう九番目の暗黒宮を目指す。
神殿に近づくたびに、何者かが自分たちを見ているような気がした。
しかし、彼らは立ち止まったりはしなかった。

紫龍は走りながら星矢の方を見る。
ミューから春麗への危険度を下げる為に、彼女の上着を持って走れと言われた。
とにかく一般人の少女への安全を図るなら、考えうる限りの方法を取らなくてはならない。
その時、自分達に出来るのは少女の身につけていた衣類を持って囮役になる事だった。
もちろん、この案が無意味なものになる可能性もある。
しかし巨人族相手に無策で居る事は出来ない。
その為、春麗から上着を得るには星矢の持つ弓の保護を理由にした。
万が一にも彼女が自分を責めないように……。
彼らは春麗を危険な目に会わせるよりも、自分達が巨人と闘う事を望んだのである。
(星矢。みんな、すまない……)
それでも紫龍はみんなの気持ちが嬉しかった。
だが今現在、春麗を連れ出してくれている冥闘士については複雑な気持ちだった。

その時、遥か遠くにある神殿の一角から光が走り、爆発音が周囲に轟く。
「何が起こったんだ!」
この直後、彼らは周囲に漂う重苦しい空気が、一気に重くなったような気がした。


黒の神殿で発生した光の爆発。
それは沙織たちの居る場所からも見ることが出来た。
「……」
沙織の表情が一瞬変わったが、彼女は何も言わない。
ミロはこの場に居続ける事に我慢できず、沙織の前に立つと素早く片膝を屈した。
「女神アテナ。 このミロに神殿へ向かう事を命じてください」
沙織は彼の様子を見ながら、しばらく考え込む。
「ミロ。神殿へは星矢たちが向かっています」
「……」
「しかし、暗黒宮に隠されているであろう闇色の闘衣の所在は、何としても確認しなくてはなりません。
例え途中で巨人族と闘う事になってもです。
蠍座のミロ。直ぐに八番目の暗黒宮へ向かいなさい」
とにかく黒の神殿に少しでも近づく事が出来れば!
そう考えていた彼は、沙織の命令に深く頭を下げた。