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小さな女の子が自分に縋り付いて泣いている。 |
カノンは我に返ると、周囲の様子を見た。 (俺は何を考えたんだ……) 不意に自分は何かを思い出していた。 何故、二人の少女をハッキリと認識し懐かしいと思ったのだろうか。 しかし、今まで妹などを持った事は無い。 (今のはいったい……) そんな彼の動揺を察知したのか、大人しく担がれているエスメラルダが不安げにカノンの方を見る。 「さて、問題はここだ」 いきなり立ち止まった乙女座の黄金聖闘士は、何も無い岩を指さした。 「この先に“少女にとっての安全な場所”がある」 しかし、シャカはカノンにそう言うだけで自分では動くつもりはないらしい。 カノンは一応エスメラルダを地面に下ろすと、離れるよう言った。 そのまま彼女は小走りに貴鬼の方へ行く。 「ディオスクーロイなら、どの様な場所の呪術も無意味だろう。 やりたまえ」 命令口調にカノンは文句を言おうかと思った。 だが岩に手を振れた途端、今居る場所の近くに何があるのか気付く。 (これは奴の気配!) 偶然か必然か。 カノンはテティスに少女と貴鬼の傍にいるよう命じた後、自らの小宇宙を岩の壁に叩きつけたのだった。 |
「来たな……」 |