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闇の闘衣をまとう闘士は、まっすぐ沙織を捕らえようとする。 しかし、アルデバランが闘衣ごと相手を破壊する覚悟でそれを阻んだ。 他の闘士から見ると同じような形をした光と闇の闘衣をまとう者が戦っているようにすら見える。 この光景に沙織は、牡牛座の黄金聖闘士と戦っている者が誰なのか直ぐに気がついた。 「巨人ガイオーン……」 確かに地母神ガイアの力添えがあれば、巨人は闘衣に制御される事は無いかもしれない。 アルデバランが何度かガイオーンの攻撃を防いだ時、沙織の耳に巨人の声が聞こえてきた。 『牡牛の情報。習得』 その後、ガイオーンはアルデバランに不敵な笑みを見せ、そのまま闇に溶け込んだのだった。 |
乙女座の黄金聖闘士はいったい何処へ行こうとしているのか。 |
沙織たちの周囲は再び静寂に包まれた。 突如起こった戦闘でアルデバランの居た場所は大地が裂け、粉塵が漂う。 「……逃がしたか」 アルデバランは悔しそうな表情をする。 しかし、沙織は彼に巨人の追跡はするなと命じた。 「あれが巨人ガイオーンですか」 ミーノスの問いに沙織は頷く。 「……私も直接戦った事が無いので、どの様な能力を持つのかは分かりません。 ただ、巨人のまとっていた黒い闘衣にも気をつけないとなりません」 その言葉にムウは首を傾げる。 確かに牡牛座の黄金聖闘士に似ていたが、彼にはただの闘衣に見えた。 「あれは何なのですか?」 ムウの問いに、沙織は暗黒宮の方を見ながら答える。 「ガイオーンのまとっていた闘衣は、神々が太古に作り上げた戦闘の道具です。 あれは装着した者に力を与えますが、それと同時に支配力が強い。 それゆえ人に使わせるべきではないと思い、制作を中止させたつもりでした。 しかし、あれは破棄されなかったのですね。 そしてそれをポリュデウケースは手に入れていた……」 沙織は手に持っていた杖をきつく握った。 杖はまだ色を取り戻していない。 彼女は言葉を続ける。 「牡牛座の聖衣に似た闘衣は本物のようですが、私もあれが何体作られていたのかは分かりません。 でも、このままこの地に眠らせるわけにはいかない。 あれは人の命を糧とします」 この時、アルデバランは自分の両腕に軽い痺れを感じた。 彼は何度か手を動かす。 その様子をミロはじっと見ていた。 |