島中に張りめぐらされた呪術の紋様が書き換えられてゆく。
その様子を地母神ガイアは注意深く見た。
彼女は無駄なく威力を変化させる紋様を見て、この呪術を組み上げたのは太古の女神に関わるものだと考えた。
少なくとも女神アテナは呪術を知識として知っていても、ここまで詳しく扱えない筈。
そして聖域の人間に出来る事ではない。
地母神は一柱の女神を思い出す。
女神アテナと海皇の孫娘、そして女神デメテルの娘の教育係だった元・競いの女神エリスの事を……。
太古の女神の一柱であるニュクスの娘なのだから、呪術に関してはエリスが力を貸していると思って良いのかもしれない。
しかし、エリスは今やオリュンポス神族に対して反抗的な対応を示している。
少し前にも昔の教え子に対して平気で攻撃を仕掛けていた。
それに島に張りめぐらされようとしている呪術は、闘士たちにとって助けになるものではない。
ガイアは残っているギガースたちを戻すべきか迷った。
まだこちらには不死身のアルキュオネウスが残っている。
敵がアテナと聖闘士だけならば勝ち目があるが、エリスと異国の娘の行動が読みきれない。
そんな迷うガイアの許に、一人の巨人族の声が聞こえてきた。
その巨人は母神を悩ませる存在を滅して見せると笑った。
我が子が自信に満ちた表情で女神アテナの軍勢を撃破するという。
ガイアは子供の言葉を疑わなかった。
彼らならそれだけの力があると無条件に思っていたからである。
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