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続・追跡者 5

蝶はヒラヒラと闇の中を飛び続け、沙織と一緒に居たミーノスの元へやってきた。
ポリュデウケースに小宇宙による会話を察知されたくない為、ミーノスは冥闘士たちの報告をフェアリー経由にしたのだ。
「女神アテナ。
やはりヘラクレスの聖闘士は深手の為、途中で動けなくなっていたようです。
こちらで保護をしました」
「……」
「ヘラクレスの弓はペガサスが引き継ぎました。
彼らは神殿へ向かっています」
「そうですか」
沙織はそう言って、再び黙った。

ミーノスは周囲を見回す。
先程まで感じていた重苦しい気配は薄らいできた。
この地に張りめぐらされた呪術が、シュンレイとかいう少女の行動で別の段階に入ったのだろうか。
だが、エリスが少女に託したモノの正体が分からない以上、様子が変わったという事態に対して警戒は必要である。
あの女神は、こちらの都合は考えない。
エリスは今も何処かで自分たちの行動を見物をしているのではないか。
彼はそう思えてならなかった。


沙織は目を閉じると深呼吸をする。
(ヘラクレスの弓は星矢に従ったのね……)
彼の守護をしている武神は、全ての者が味方するとまで言われた存在である。
その加護を得た星矢なら……。
そう考えながらも沙織は一抹の不安を感じていた。
最強と謳われる武神の力に星矢が飲み込まれはしないか。

(彼女が此処にいてくれたら……)

それが意味のない願いだとしても、沙織はそんな事を考えてしまった。

親友との再会。
事情を知っている人間から見れば、やはりもう少し感動的な筈。
だが、こちらもその言葉には似つかわしくないモノだった。
同胞からの攻撃に、童虎本人よりも春麗達の方が驚いてしまう。
しかし、シオンは外野の存在を無視して親友を睨み付けた。
その迫力に周りの方が緊張する。
「若返りの薬を飲んだわりには、反射神経がジジイのままだな」
彼の言葉に童虎は腹を抑えながらも楽しそうに笑った。
「おぬしも同じらしいが、性格が昔よりも屈折したようだな」
その言葉にシオンの怒りは頂点に達してしまう。

「減らず口をたたくな」

その瞬間、七番目の暗黒宮内に星屑が煌めいたのだった。