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少女と養父の感動の再会。 その筈が七番目の暗黒宮は得体の知れない沈黙に満ちていた。 「何で此処に春麗がおるんじゃ!」 巨人を倒した後の童虎が最初に言ったのは、この台詞だった。 威圧的な眼差しにアイオリアの背中に冷たいものが流れる。 (上手く説明できるだろうか……) はっきり言って自信はない。 アイオリアは心の中で断言した。 春麗の方はと言うと、不思議そうに天秤座の黄金聖闘士を見ている。 その視線に童虎は自分の置かれている状況を理解した。 (どう説明したものかのう……) そんな彼の緊迫した状況に、獅子座の黄金聖闘士は追い打ちを掛けてしまう。 「老師、お怪我は無いですか」 一瞬、その場の空気が凍りつく。 春麗は老師と呼ばれた青年を見た。 「まさか……」 五老峰の大滝の前に長い間座していた老人が、この青年だと言うのだろうか? ところがこの再会は、手強い存在の登場により様子が一変した。 「童虎!!!!」 突然の怒鳴り声に、春麗は驚いてアイオリアにしがみつく。 魔鈴は声のする方を見た。 「おぉっ、シオン」 童虎が親友の登場に喜ぶ。 しかし、相手は構わずに彼の腹に拳を打ち込んでいた。 |
「ヘラクレス座の聖闘士は、こちらで脱出させる」 星矢たちの背後に立っていたのはパピヨンの冥闘士ミュー。 他に数名の冥闘士たちがいた。 「ミュー……」 いきなり現れた闘士に、聖闘士たちは絶句する。 「どうして此処に……」 瞬は困惑したが、地妖星の冥闘士はそんな彼の対応を無視した。 「貴様らの為ではない。 とにかく時間が無いのだから、フォローはこちらに任せて神殿へ向かえ」 既にトロルの冥闘士イワンがアルゲティに肩を貸していた。 相手の言葉を信じるか否か。 しかし、迷っている時間はない。 「よし。アルゲティを頼んだぞ」 星矢たちは決意を固めると、そのまま次の暗黒宮へ向かって駈けだした。 ミューはその様子を見た後、手から淡く光る蝶を手から放した。 「あんた達の狙いは何だ」 イワンに背負われながらアルゲティは訪ねる。 トロルの冥闘士はしばらく黙っていたが、アルゲティが自分の答えを待っている。 彼は諦めたかのように返事をした。 「目的が一緒なら我々は如何なる存在とも手を組む。敵対すれば滅ぼす。 それだけの事だ」 簡潔な返事に、アルゲティは黙った。 同じ闘士だからこそ、言葉の意味が十分に分かったからである。 |