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続・追跡者 4

少女と養父の感動の再会。
その筈が七番目の暗黒宮は得体の知れない沈黙に満ちていた。

「何で此処に春麗がおるんじゃ!」
巨人を倒した後の童虎が最初に言ったのは、この台詞だった。
威圧的な眼差しにアイオリアの背中に冷たいものが流れる。
(上手く説明できるだろうか……)
はっきり言って自信はない。
アイオリアは心の中で断言した。
春麗の方はと言うと、不思議そうに天秤座の黄金聖闘士を見ている。
その視線に童虎は自分の置かれている状況を理解した。

(どう説明したものかのう……)
そんな彼の緊迫した状況に、獅子座の黄金聖闘士は追い打ちを掛けてしまう。
「老師、お怪我は無いですか」
一瞬、その場の空気が凍りつく。
春麗は老師と呼ばれた青年を見た。
「まさか……」
五老峰の大滝の前に長い間座していた老人が、この青年だと言うのだろうか?
ところがこの再会は、手強い存在の登場により様子が一変した。

「童虎!!!!」

突然の怒鳴り声に、春麗は驚いてアイオリアにしがみつく。
魔鈴は声のする方を見た。
「おぉっ、シオン」
童虎が親友の登場に喜ぶ。
しかし、相手は構わずに彼の腹に拳を打ち込んでいた。

「ヘラクレス座の聖闘士は、こちらで脱出させる」
星矢たちの背後に立っていたのはパピヨンの冥闘士ミュー。
他に数名の冥闘士たちがいた。
「ミュー……」
いきなり現れた闘士に、聖闘士たちは絶句する。
「どうして此処に……」
瞬は困惑したが、地妖星の冥闘士はそんな彼の対応を無視した。
「貴様らの為ではない。
とにかく時間が無いのだから、フォローはこちらに任せて神殿へ向かえ」
既にトロルの冥闘士イワンがアルゲティに肩を貸していた。
相手の言葉を信じるか否か。
しかし、迷っている時間はない。
「よし。アルゲティを頼んだぞ」
星矢たちは決意を固めると、そのまま次の暗黒宮へ向かって駈けだした。
ミューはその様子を見た後、手から淡く光る蝶を手から放した。

「あんた達の狙いは何だ」
イワンに背負われながらアルゲティは訪ねる。
トロルの冥闘士はしばらく黙っていたが、アルゲティが自分の答えを待っている。
彼は諦めたかのように返事をした。
「目的が一緒なら我々は如何なる存在とも手を組む。敵対すれば滅ぼす。
それだけの事だ」
簡潔な返事に、アルゲティは黙った。
同じ闘士だからこそ、言葉の意味が十分に分かったからである。