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暗黒宮をひた走る星矢の脳裏に、微かではあったが人の声が聞こえてきた。 彼は思わず立ち止まり、周囲を見回す。 「どうした。星矢」 紫龍の問いかけに、星矢は静かにして欲しいというジェスチャーをした。 氷河も彼の様子に周囲を見回す。 しかし、彼らには風の音しか聞こえなかった。 星矢は意識を集中する。 (……) それは懐かしい声だった。 「アイオロス!」 星矢は不意に涙が出そうになる。 それを何とか堪えながら、彼は射手座の黄金聖闘士の言葉を聞いた。 |
壊れたヘラクレスの弓。 これではもう矢を番える事は無理だった。 瞬はとにかくアルゲティを助けなくてはと思ったのだが、アルゲティの方が頑として退くことを認めず、彼に弓を触らせない。 「オレは大丈夫だ」 「でも、その傷じゃ……」 しかし、瞬自身も自分が触れて良いのか分からずにいた。 今の自分では弓に悪影響を与えるのではないか。 だが、アルゲティはもう動く事がやっとだという程の傷を負っている。 彼が意を決してヘラクレスの弓に手を伸ばした時、それを止める声が聞こえてきた。 「瞬。それに触るな!」 聞き間違える事の無い声に、瞬は動きを止める。 「星矢!」 「それは俺がアイオロスの所へ持ってゆく。 彼から依頼されたんだ」 ペガサスの聖闘士は、アルゲティに向かって手を伸ばした。 「アイオロス……。 射手座の黄金聖闘士の……?」 アルゲティは星矢の目を見て問う。 「そうだ。 何でもヘラクレスの弓については、賢者ケイローンから頼まれていると言っていた」 この会話に瞬は首を傾げる。 「賢者ケイローンって、神話に出てくる半人半馬の?」 彼の疑問に紫龍が答えた。 「そうらしい。 射手座は元々賢者ケイローンの事だと、老師にお聞きした事がある。 もしかすると彼はヘラクレスの弓の扱いを知っているのかもしれない」 そう言いながら紫龍はしきりに先の方を見た。 「良かろう。 あの方なら、何かご存じかもしれない……」 アルゲティは覚悟を決めて、星矢に壊れた弓を渡す。 「さっきよりも紋様が光らなくなっているぞ」 氷河の言葉に若き青銅聖闘士達は互いに頷きあった。 「それと、彼を安全な場所に連れて行かないと……」 ここは刻一刻と状況の厳しくなる戦場である。 そう言った瞬の意見に、 「それなら俺が連れて行こう」 氷河は申し出た。 しかし、今度はアルゲティが拒絶した。 最優先事項はヘラクレスの弓を射手座の元へ持ってゆくという事。 呪術の張りめぐらされている場所では、どのような事態が発生するか聖闘士には分からないのである。 自分の為に、人数を割いてはいけないと彼は怒鳴った。 だが、星矢たちは彼を戦場に置き去りに出来ない。 そう割り切るには、彼らは若すぎた。 その時、黒い影が複数、彼らの背後に出現した。 |