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続・追跡者 2

地上に降り注ぐ雨は、デスクィーン島の乾いた大地を潤し始める。
歩く度に泥がまとわりつく。
「バイアン。どんな様子だ」
現状確認をしに来たクリシュナに、シーホースの海将軍は大地の窪みを指し示す。
仄かに光るその場所には、周囲の水が流れ込んでいた。
「グリフォンの冥闘士に協力してもらった。
先程、冥闘士たちから呪術の力が消えつつあると言われた」
肩の傷を抑えながら彼はそう説明する。
「そうか、協力してくれたのか……」
相容れないと思っていた存在が手助けをしてくれた。
クリシュナの胸に熱いものが込み上げる。
「問題の場所の地盤が固かったからグリフォンの冥衣を杭にして、周辺の地盤を打ち砕いた。
相手は三巨頭の一人だし、向こうは何とか復活したから大丈夫だろう」
淡々と当時の様子を説明をされて、クリシュナは背筋に冷たいものを感じた。
バイアンは特に気にする風でもなく、少しずつ溜まっていく水たまりを静かに見つめる。
真夜中で雨も降っているというのに、島の大地は僅かに光を放っていた。

争いの女神エリスが春麗に渡した箱が何なのか。
それは呪術の施されたものだというだけで、実は詳しい事は誰も知らない。
一見すると箱が吐き出した煙が呪術の紋様が放つ光に吸い込まれただけである。
だから春麗自身も、箱が何をしたのか分からなかった。

だが、巨人ポイトスは身をもって黒い煙の正体を知った。

巨人は自分の体に染み込む黒い呪術に叫び声をあげる。
箱から放たれた力は、呪術の紋様を塗り替え始めたのである。
こうなると母神の施してくれた完璧な呪術は、あっけなくバランスを崩してしまう。
そして黒い呪術は自分の体を足掛かりにして、島の大地に存在する紋様にも影響を与え始めた。

ポイトスの体に施された呪術は黒い煙によって組み換えられる。
この時に生じた痛みの為、巨人は無茶苦茶に暴れ回った。

アイオリア達が大地の割れ目から元の場所に戻った時、巨人の右半分は岩になり掛かっていた。
今も彼らの目の前で、巨人は岩になりつつある。
ポイトスは怒りのあまり、未だに動く左腕を延ばし童虎を攻撃しようとした。
その瞬間、巨人の腕から火花が散る。

「例え巨人族でも、この盾を破壊する事は不可能じゃ」

黄金の盾の前に、巨人の腕が砕ける。
天秤座の黄金聖闘士は、畳みかけるように巨人に向かって必殺技を放った。
「廬山百龍覇!」
強い光を伴った衝撃に、巨人ポイトスの体は岩が崩れるかのように粉々になる。
その直前、光の中を移動する黒い水のようなものが巨人の体から大地へと流れ込んだ。
巨人ポイトスの足元にあった光の紋様は、別の模様へと変化し始める。
それと同時に大地の色が変化し始めた。