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地母神ガイアは島の重要なポイントである呪術の中心に、闘士以外の何かが居るように思えた。 ところが確認をしようとすると、その姿が朧げになってしまう。 気にしなくても良いのかもしれない。 自分の勘違いなのかもしれない。 だが、不吉な予感がして落ち着かない。 彼女は息子の一人を島の中心へと導いた。 |
四本目の柱の消滅により、黒の聖域に満ちていた呪術の光は弱まり始める。 春麗はその現象を見て、もうすぐ目の前にいる黄金聖闘士の所へ行けると思った。 確かに聖闘士たちだけなら今の段階でも難なく移動できるかもしれないが、一般人である春麗の場合は、僅かでも光っていると動くことが出来ない。 気ばかり焦ってしまうので、彼女は落ち着くために何度か深呼吸をした。 (多分、あの人の居る場所がエリスさんの言っていた場所なんだわ) 今まで光っていた紋様の大きさと点滅の流れを見ていた彼女は、この地に張りめぐらせれた呪術の中心が黄金聖闘士の居る場所であると思った。 ただ、そうすると老師は何処に居るのだろうかと考える。 この付近に閉じ込められているのだろうか? ならば、目の前の人に訳を話して一緒に探してもらえたら……。 老師の知り合いなら、きっと自分の話を聞いてくれる。 彼女はその闘士が優しい人のような気がした。 しかし、邪悪な闇は春麗のすぐ傍まで迫っていた。 |
巨人ポイトスは母神の導きで呪術の中心部へとやって来た。 そこは呪術の力が未だに満ちており、体を回復するにも都合が良い。 彼は島に残された貴重な場を得るべく、その手を伸ばした。 |
「逃げろ!」 突然叫ばれて、春麗はとっさに振り返る。 目の前に大きな手が見えた。 しかも人の手の大きさというレベルではない。 彼女は動く事ができなかったが、金色の光がその前に立ちはだかる。 「ライトニングプラズマ」 獅子座のアイオリアが巨人ポイトスに向かって必殺技を放つ。 だが、巨人は体を折り曲げて倒れそうになってはいたが、何とか持ち堪えた。 しかも、その体に光る呪術の紋様は、周囲に残された光を取り込む。 そのエネルギー吸収の余波で、周囲の岩盤が割れ始めた。 春麗の足元は突然崩れ、彼女は下へ滑り落ちてしまう。 「魔鈴! 彼女を頼む」 アイオリアの言葉に魔鈴は大地の割れ目に飛び込んだ。 |
「沙織さん!」 星矢の声に沙織は声の方を振り返る。 そこにいたのはミーノスたち冥闘士に、腕やら襟首を掴まれた青銅聖闘士たちだった。 「星矢。皆もよくやりました」 沙織は彼らを労うが、まだ全てが解決したわけではない。 「ところで、ミーノスたちに連れてきて貰ったのですか?」 その問いに星矢は頷く。 光の柱が崩壊した今、呪術が常に機能しているわけではない。 それでも何かの拍子に突然威力を発揮するという不安定な症状も残っているのである。 しかも、部分的には未だに表面に現れている紋様もあった。 最初の頃よりも面倒になった現象に、早急に事後処理をしなくてはならない冥闘士たちが強引に協力を申し出たのである。 冥闘士の中でもテレポート能力に長けた者ならば、聖闘士たちを黒の聖域に連れて行く事は簡単だったし、今は素早い対応が必要だった。 彼らとしては女神アテナに状況を訪ねるべく、手土産を持ってやって来たという感覚らしい。 しかし、この協力で瞬時に沙織の元へ来れたのだから、星矢たちも文句を言い難かった。 とにかく状況が変化しているのは誰の目にも明らかなのだが、沙織たちにも分かっていることは、ごく僅かな事に過ぎない。 「呪術が未だに作動しているものと、消えたもの、消えようとするものの区別がこちらでは分からない。 今、ヘラクレスの矢の威力が衰えているのか確認をする為に、アルゲティが瞬と共に神殿へ向かっている」 アルデバランの説明に驚いた星矢たちは、黒い十二宮の方を見た。 初めて見たときよりも光は少なかったが、依然、黒い建造物は圧倒的な存在感を示していた。 |