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「ゴッドブレス!」 接近戦ゆえ、バイアンは片手で技を掛けねばならなかったが、それでもミーノスは大地が抉られるほどの威力をまともに喰らう。 他の闘士たちが呆然とした直後、周囲の大地から水が吹き出した。 ミーノスは雨のように周囲に降り注ぐ冷たい水に意識を取り戻す。 再びグリフォンが動こうとした時、彼は大地に倒れたまま叫んだ。 「グリフォン。私に従え」 この様な無様な真似は二度とさせない。 グリフォンは名残惜しそうにシーホースとペガサスの動きを探っていたが、最後は彼の命令に従った。 妖獣は長い間一緒に居た闘士の判斷に間違いは無いと、冥王が言っていた事を思い出したからである。 それに、いくら自分が捕食者でも、先程のような反撃をもう一度くらってはつまらない。 彼の中で暴れていたグリフォンの意識は、急に大人しくなった。 「グリフォンは抑えた……」 ミーノスの言葉に、彼を押さえつけたまま場合によっては二回目の技を発動させようとしたバイアンが手を離す。 「そのまま永久に抑えていろ」 シーホースの海将軍は、そう言ってミーノスから離れた。 この時、吹き出した冷たい水とは違うものが、周囲の大地に降り注ぐ。 雨が降ってきたのだ。 ただでさえ呪術の光が消えつつある場所での雨と言う事で、周囲は一気に暗くなっていった。 |
4本目の柱が崩壊は、黒の神殿に居たポリュデウケース達にも分かった。 「この勝負はアフロディーテの勝ちだな」 デスマスクの言葉に、ポリュデウケースは眉を潜めた。 「柱は崩壊したが、この島の機能が停止した訳ではない……」 「何っ!」 デスマスクは足元の紋様を見た。 「巨人族を外に出す為に、地母神ガイアが力を与えている可能性がある……」 過去に彼が作り上げた呪術は崩壊したが、それに変わるものがガイアによって用意され無理やり設置された状態だと言う。 アフロディーテの方はと言うと、二人の会話に何も言わず、ただ厳しい眼差しで足元の光を見ていた。 |
突発的に出現する事のある呪術の紋様を避けながら、 アイオリアと魔鈴はようやく七番目の暗黒宮に到着した。 彼らはその入り口で倒れている人物を発見する。 「教皇!」 彼はシオンを抱き起こす。 「ア……アイオリア、先にいけ。春麗の方を頼む」 既に彼女が中に入っていると言われ、アイオリアは頷いた。 二人の聖闘士は建物の方へ駈け出す。 シオンもまた、何とか立ち上がると暗黒の宮へと向かった。 彼らの背後では、岩と化してこの地に残された巨人ミマースの右腕に弱い光が走る。 そしてそれは指先が少し動くと、今度は光が消え闇に溶け込んだのだった。 |
同じ頃、アルゲティと瞬は六番目の暗黒宮を抜ける所だった。 瞬は注意深く周囲を見る。 だが、相手の方が待ち伏せという方法で攻撃を仕掛けてきた。 先程まで七番目の暗黒宮にあった巨人ミマースの右腕が、いきなりアルゲティに襲いかかったのである。 何かが折れる音が聞こえてきた。 「しまった!」 アルゲティと敵が近すぎて、瞬はネビュラチェーンが使えない。 しかし次の瞬間、アルゲティは自らの技で敵を仕留めた。 「コルネホロス!」 高く放り投げられた巨人の腕は、そのまま空中で塵となる。 だが、この事態でヘラクレスの弓は何かの細工が外れたのか、二つに分離してしまった。 そして、アルゲティ もまた大地に伏してしまう。 「しばらくすれば動ける……」 アルゲティは瞬にそう言ったが、どう見ても彼の受けた傷は深い。 ヘラクレスの弓もどうしたらよいのか。 瞬は最悪の事態に悩んでしまった。。 |