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目の前にいるペガサスの聖闘士を捕らえる。 そのような自分の行動に、彼自身が驚いていた。 (まさか、私はグリフォンに乗っ取られたのか!) そう気づいた時、別の声が彼の耳に届いた。 (コノママ女神ト一緒ニ葬ル……) 人間のものとは思えない声。 早く主導権を取り戻さねばと、ミーノスは焦った。 しかし、彼の指は聖闘士の息の根を止めるべく動こうとしている。 何としても阻止しようとした瞬間、彼の目の前が真っ暗になった。 |
『お前がグリフォンか……』 そう問いかける声に、ミーノスは緊張した。 (この声はハーデス様!) 再び視力を取り戻した時、最初に見えたのはハーデス城の玉座だった。 そこには自分の神が立っている。 (ここは……) 彼は慌てて冥王ハーデスに対して礼をする。 何故、自分が此処にいるのかが分からない。 とにかく非礼にならぬよう返事をしたいのだが、今度は言葉を出そうとしても上手く出せないという事態に陥ってしまった。 しかし、目の前にいる冥界の王は、特に気にしていないようである。 『噂に聞いていたが、是れ程の生き物とは……』 冥王の声ははっきりと聞き取れるのだが、他の気配を感じない。 まるでこの場には王と自分しかしないかのよう。 ミーノスは周囲を素早く見回したが、深い闇があるだけで壁も柱も見当たらない。 そもそも此処は本当にハーデス城なのだろうか? そんな考えが過る。 彼は城内の異常に警戒した。 すると冥王は彼の様子に笑ったのである。 『グリフォン。其方と取引をしたい』 ミーノスは信じられない言葉に、自分の耳を疑ってしまった。 |
縮小し始めた光の柱の傍で、ペガサスの聖闘士とグリフォンの冥闘士が戦闘状態に突入する。 しかし、今回は休戦の筈と言う事で、他の闘士たちはとにかく止めるべく動いた。 「とにかく、二人を引き離す!」 最後の柱の様子を見に来た紫龍は、直ぐさまエクスカリバーを使いミーノスと星矢の間に入った。 未だに守護女神の力を保持した龍座の神聖衣から放たれた技は、他の闘士達からは空間そのものを切り裂いたかのようにも見える。 「星矢。とにかくここから離れろ!」 紫龍と同じようにやって来た氷河が、大地に倒れていた星矢を立ち上がらせる。 「あれは何なんだ」 咳き込みながら星矢は立ち上がる。 「俺たちには分からないが、冥闘士たちにはわかっているらしい」 とにかく冥王側がいきなり敵に回ったのかと思える程、彼の星矢への攻撃は容赦が無かった。 そして冥闘士たちは、そんなミーノスを止める事に苦戦していた。 「ミーノス様!」 ルネがバルロンの鞭で、ミーノスの腕を捕らえる。 「正気に戻ってください」 これが冥衣に蝕まれた者の姿なのかと彼らは思った。 よもや三巨頭の一人であるミーノスが変貌を遂げるとは、最悪としか言いようが無い。 しかも、自分たちは魔星の性質上、同胞を倒す事は出来ない。 このまま消耗戦になるかと、誰もが思った。 |