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続・同胞 6

巨人ポイトスは聖闘士の反撃に直ぐさま撤退をした。
何が聖闘士に力を与えているのか分からない。
だが、相手は確実に神を味方にしていた。
このままでは勝てない。
しかし母神の許に逃げ込めば、他の兄弟たちに馬鹿にされるのは目に見えている。
彼はどうすれば自分の立場が守れるか考えた。

「……倒せたのか?」
一輝はそう呟いたが、これ以上は追いかけられなかった。
彼は洞窟の壁に寄り掛かる。 体がひどく重い。
まるで全身に重りのようなものを付けられたかのようだった。

彼はエスメラルダたちを探していた時、偶然彼女が持っていた小袋を拾った。
通路を迷わず進み、とにかく急がねばと走る。
ところが途中で巨人族の作り上げた出口を見つけたのである。
それは一目で呪術の紋様などという生易しいモノではない事は分かった。殺気すら感じる。
巨大な穴から何かが出てくる事が推測できた。
そうなると此処は戦場になる。
一輝は周囲を見回す。
彼女たちが何処にいるのかは分からない。
(ならば素早く敵を滅するのみ!)
一輝は闘うことを躊躇ったりはしなかった。

巨人に先制を加えた時、その声は聞こえてきた。
(あれは何者だったんだ……)
人間である自分の攻撃では、あまり効果がないと言ってきた声。
女性のように思えたが、強引に自分に力を与えると言う。
こちらの事を獅子と呼ぶのが気に入らない。
幻聴かと無視をしたが、フェニックスの神聖衣が急に変化したのである。
相手は自分の言い分を無視する者らしいと覚悟を決めて、鳳翼天翔を使った。

その一撃で、今度は巨人の方が姿を消した。

あの攻撃で周囲の地形すら変わったのだから、一輝自身もその威力が桁違いなのは分かった。
女性の声はもう聞こえない。
(早くエスメラルダたちを見つけないと……)
一輝は声の主が好意で自分に力を貸したとは思えない。
不安と焦燥を抱えて、彼は歩き出す。
とにかくエスメラルダの無事な姿が見たい。
そんな彼の背後で、大地が仄かに光を放ち直ぐに消えて暗闇となった。
先程までの騒ぎが嘘のように、周囲は静まり返っていた。