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島の大地に水が染みだす。 「貴方が来てくれて助かりました」 ソレントの言葉に、クリシュナは苦笑いした。 もしかすると彼なら、フルートで地下にある呪術の空間に直接攻撃が出来たかもしれないと考えたからである。 しかし、相手は仲間の疑問をあえて無視した。 「やはり直接攻撃は貴方に任せますよ」 どうにも体力勝負は任せると言われているような気がしないことも無い。 とにかく、無理やり亀裂を作るのも愚かしいので、クリシュナは任せろと言うに止めた。 「どうにも人間のコピーと対決するのは、気持ちのいいものではないですね」 先程の戦闘において冥闘士たちも感じていた違和感を、ソレントはずばりと指摘する。 「人間のコピー?」 「そうですよ。向こうは私のフルートの音色を聞いても影響を受けなかったのですから、そもそも人間ではなかったのですよ」 どんな理屈だと周囲の冥闘士たちは思ったが、海将軍と言い争うのは得策ではないので沈黙を守ることにした。 その時、周囲の空気が湿りけを帯びたと海将軍たちは思った。 それは自分たちが2つ目の呪術の設置点を破壊したからなのだろうか? しかし、何かに呼応するかのように、海将軍たちの鱗衣から微量の光が放たれた。 「これは……」 「鱗衣が何かに反応しているのでしょうか?」 クリシュナとソレントは周囲の様子を見回す。 しかし、荒廃した島の大地に闘士たち以外の気配はない。 冥闘士たちも何か異変が起こっているのは分かるのだが、それが何なのかが分からなかった。 |
「水が動いている……」 イオは足元の水たまりを見た。 先程、地下にある呪術の発動場所を破壊した時に出来たものだが、再び大地に吸い込まれると言うわけではないらしい。 それらは一斉に同じ方角に向かって流れているようだった。 「最期の柱に向かっているな……」 イオの言葉にシルフィードも同じ方角を見た。 |
島に突如として現れた四つの光の柱。 その内の三本は既に無い。 最後に残った柱は出現時の時よりも大きくなっていた。 傍に寄ると膨大なエネルギーの奔流をくらう。 この為、外側にいる闘士たちは前よりも柱に近づくことが出来なくなった。 そして今、青い光が戦場に舞い降りた。 最初に呪術の張りめぐらされた島で目覚めた時、アキレウスは養母テティスの気配を感じていた。 だが、彼は身につけた闘衣の性質に支配され、戦闘する事だけを考えるようになってしまう。 今ハ目前ノ敵ヲ滅セヨ。 しかし、そんな意識を突如現れた青い光が切り裂く。 アキレウスは目の前の闘士が輝く闘衣をまとっている事に驚いた。 相手の白い鎧にはめ込まれた青い宝石。 それは海の色を思わせる。 そして、その闘士の傍に寄り添う武装した女性を見たような気がした時、彼は相手が伝説の女神の加護を得たのだと悟った。 |