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続々・庇護 5

「巨人ミマース。火と鍛冶の神を覚えているか?」
シオンの問いに相手は一瞬たじろぐ。
そして炎はシオンからミマースへと移動する。
その動きは蛇のようだが、何しろ炎を発生させているのはドロドロになった溶岩なのだ。
溶岩はミマースの足元に広がると、彼の身体を呑み込んだ。
巨人本来の姿ならばもう少し時間がかかったであろうが、今は人間よりも大きいというくらい。
瞬く間にミマースの下半身は大地へと沈む。
巨人は溶岩から逃れようと、身体を大きくしたり長くしたりと変形を繰り返す。
そのうち近くにあった呪術の光とミマースの身体に書かれていた呪術の紋様が溶け合い、彼の身体は崩れ落ちた。
そして岩と化した右腕のみを残して、ミマースは完全に消滅。
周囲は急に静かになった。

「神の力を借りると、ここまであっけなく終わるのだな……」
それが実力の差なのだろう。
そしてシオンは周囲の空気が再び冷えると同時に、急に自分の身体が重くなったように感じた。
緊急時と言う事で、即席に神の依代になったのである。
慣れない感覚と異質な力によって身体に負担が掛かったらしい。
彼は口の中で血の味を感じた。
そしてその場にズルズルと座り込んだのだった。

深い青の世界。
そこから彼は外の様子を見ていた。
デスクィーン島にて発生したギガントマキア。
そして今回の騒ぎに対して未だに動かない天上界。
海皇ポセイドンは三叉の鉾をきつく握った。


遥か昔、海の女神と出会った聖闘士がいた。
単にペガサスの聖闘士だったという事で、当時は疑問にも思わなかった。
何故なら馬は自分の管轄下にいる動物。
それが神聖なる翼を持って、この世に誕生したもの。
パラスが特に目をかけるのも無理はなかった。
しかし、今思えばこれが予兆だったのだろう。

そしてパラスは親友を守る為に世界から姿を消す。
もう誰も名前を口にしない。
そんな忘れ去られた筈の女神を、忘れずに追うものが居た。
片方はゼウス。
こちらはパラスを直接捕らえない限り、探し続けるだろうと分かっていた。
もう片方はペガサスの聖闘士。
これが分からない。
最初は人間の方が探しているのではなく、ペガサスの聖衣がパラスを探しているのだと思っていた。

だからこそ、この事に気が付いた天上界は数多くの人間を聖域に送り込んだ。
その目的はペガサスの聖衣を合法的に得て、 パラスを見つける事。
なのにあの聖闘士は天上界が用意した闘士たちを退けて、幾度かペガサスの聖衣を得ている。
ただの人間だというのに、その男は地上に現れてはパラスを探している。
何がその聖闘士を突き動かしているのだろうか。