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続々・庇護 4

金と銀の光……。

巨人ミマースが小賢しい人間と闘っている頃、巨人グラティオーンは二つの光を見つけ激昂していた。
忌ま忌ましい光。
先のギガントマキアにて、憎き神々が自分に歯向かった。
それは太陽の神と月の女神。
しかも英雄と呼ばれた人間の弓矢で止めを刺されたという事実は、巨人の一人として恥ずべき事。
それによく似た光が目の前にあるのだ。
そして彼は問題の弓矢が近くにあると察知した。
目の前にいる金と銀の光を放つ者を血祭りにあげ、弓矢を壊す。
復讐に燃える巨人は、先に二つの光に手を伸ばした。

神話に名高い巨人と闘う。
それは白銀聖闘士である魔鈴が行うのには、力に差が有りすぎた。
しかし、彼女は逃げずに獅子座の黄金聖闘士を守るように立ちはだかる。
それが自分のやるべき事だからだ。

広大な大地の奥底で彼女は回想する。
太古の物語。
既に起きてしまった出来事を……。

オリュンポス神族を唆すことで、地母神ガイアは再び王を取り替えることに成功した。

クロノスを滅ぼしティーターン神族の男神をタルタロスに封じたゼウスは、次の神々の王となる。
そして救い出されたキュクロープスたちとヘカントケイルたち。
ガイアは子供たちとの再会を喜ぶ。
ところがゼウスはガイアが大事に保護していたギガースたちの存在に難色を示したのである。
何故なら彼らもまたウーラヌスとガイアの間に生まれた者たちなのだが、その性質は非常に凶暴かつ残忍。
そして強欲だった。
しかし、ガイアは彼らを溺愛していた。
だからこそ彼らが自分の兄弟たちにライバル心を燃やしながら育っている事を憂いたりはしなかった。
一番強い者が他を従えさせれば良い。
ウーラヌスもクロノスもゼウスも、そうやってきたのだから……。

しかし、その強い筈のギガース達が次々と倒されている。
彼女は悪い夢を見ているように思えた。

巨人ミマースは階段や床を破壊しながら、シオンを追い詰めていた。
実は戦闘に長けたシオンが巨人の攻撃を避けるのは簡単なのだが、それでも春麗の方へ移動させないように気をつけなくてはならない。
しかし、そんな配慮も必要ないくらい、その巨人はシオンを攻撃する事に集中していた。
(しかし、このままでは戦闘が長引くだけだ……)
スターダストレボリューションを何度仕掛ければ巨人を倒せるだろうか。
そんな事を考えていると、再び彼の耳に音が聞こえてきた。

(何の音だ?)
よく聞くと言葉に聞こえないことは無い。
『……』
しかし、その内容を素直に信じる事は難しい。
声の主はこちらの立場を勘違いしているのではないかと疑いたくなる。
(もしかすると、これは罠か……)
そんな考えが過る。
『……』
再び声の主が聞こえた。
相手がようやく自分の名前を名乗ったのである。
その瞬間、シオンは不安を振り切った。
「それしか方法が無いというのなら、一度だけ従おう」
シオンは声の主の言われた通りに、直接巨人の拳を両手で受け止めた。
ミマースはシオンを捕まえるチャンスを得たと思い、空いていた左手でシオンを掴もうとする。
ところがその瞬間、シオンの身体を炎が包み込む。
周囲の温度が一気に上がった。