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続々・庇護 1

既に胴体は奇妙な形に折れ曲がり、その上を細い光が僅かに走る。
石の巨人が再び動くということは有り得ない状態だった。

「私は少々気になる所があるので、後は任せます」
そう言ってグリフォンの冥闘士は、さっさとこの場を離れてしまった。
残されたゴードンは、とにかく自分の冥衣と因縁のある迷宮の番人に近づいてみる。
「……」
石像には、先程まであった巨人の気配も動き出そうとする力も感じられない。
しかし、時々呪術の光が石像の目に入り込む様子は、まだ石像に力が残っているかのような印象を与えた。
「迷宮の番人タロス。
俺の名はゴードン。冥闘士だ。
今度は俺がミノタウロスと共にいよう」

何故、そのような発言をしたのかゴードン自身にも分からない。
しかし、その直後に振るった最強の斧『グランドアスククラッシャー』によって、迷宮の番人は砂になって大地に還った。
まるで石造自身も自分の役目は終わったと言いたげな鮮やかな幕切れ。
(ミノタウロスが示すものを託されたと言うことか……)
しかし、それが名前なのか力なのかは、まだ彼にも分からない。
(さて、あの方を追わなくては……)
一撃で巨人を倒したグリフォンの冥闘士。
ゴードンはミーノスの去っていった方角を見る。
何か嫌な予感がした。

鋭い刃物のような風が建物の壁や床を砕く。
そして風が止んだと思ったら、今度は静かすぎるくらい何の気配も感じられない闇の宮。
魔鈴は警戒しながら建物の内外を見て回った。
(やはり中の方に細工がされているのか?)
彼女は再び宮の中に入る。
そして次々と部屋を見て回った時、ある部屋の片隅で光を見たような気がした。
(……)
そして僅かに壁に向かう空気の流れを感じたのである。
(この先に何かある!)
彼女は素早く壁を蹴った。

既にヒビの入っている其処は、魔鈴の一撃で粉々に砕ける。
そして光の揺らめく空間の奥には、両手足を岩に埋め込まれ頭と胸のみが出ている青年。
魔鈴は呪術によって書かれた紋様を巧みに避けると、獅子座の黄金聖闘士に近づく。
そして彼女が移動した後、その部屋に周囲のモノとは違う色で光る紋様が現れた。

(アイオリアも随分厳重に閉じ込められたものだね)
しかし、これくらいやらなければ彼を封印する事は無理だろう。
そんな敵の判断に感心する前に、アイオリアを目覚めさせなくてはならない。
一応、何度か頬を叩いてみるが無反応。
魔鈴はとにかくアイオリアをここから連れ出す事にした。
「なるべく一撃で片を付けるようにするよ」
彼が聞いたら謝罪なのか告知なのか判断に苦しむ台詞を言うと、鷲座の白銀聖闘士は自らの小宇宙を燃やして必殺技を放った。

「イーグルトゥフラッシュ!」

銀色の閃光が走った後、アイオリアを封じ込めている岩全体が震えた。