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続・庇護 8

島の一角にて濛々と立ち込める湯気。
リュカオンの冥闘士であるフレアギスは周囲の様子を見回した。
(あれが奴らの力なのか……)
柱消滅後の展開の速さに、他の冥闘士たちも終始無言だった。

紫龍の活躍により巨人と三本目の柱が倒される。
その直後にフレアギスたち冥闘士が調査ポイントに到着したのだが、同じタイミングで太古の時代の兵士と思われる者たちも出現。
周囲は一時、乱戦状態となった。

だが、守護女神がいる紫龍のエクスカリバーが大地を抉りながら、その者たちを粉砕。
フレアギス自身もその力によって危うい所を救われたのだった。
ただ、闘士たちの方が絶対的に強いのだが、無尽蔵に出現する兵士たちに足止めされていることには変わりなく、時間だけが過ぎてゆく。
しかし、しばらくしてやって来た闘士の一撃が戦況を大きく変えた。

「クリシュナ!」
紫龍の言葉にフレアギスは、その人物を見た。
(あれは海将軍か!)
彼は瞬時にその海将軍の実力を察知した。

「このクリシュナ。義によって助太刀を致す」
海将軍はそう言って崖のような場所から戦場に舞い降りると、兵士たちを薙ぎ倒す。
そして、ある地点に黄金の槍を突き刺したのだった。
穴を開けられた地面から、水が染みだす。
水の量は徐々に増えて広がり、それと共に太古の兵士たちの姿が歪み始めた。
その瞬間、あれ程までに闘士を攻撃していた兵士たちの動きが止まったのである。

「クリシュナ。何をやったんだ?」
紫龍には何が何だか分からなかったが、フレアギスには理解出来た。
(海将軍が地下空間を水没させたのだ)
何処に有るのか分からない呪術の書かれた場所は、おそらく空洞みたいになっている筈。
そこに大量の海水が侵入すれば、強度に問題がある部分は影響を受ける。
(そして、実際にその部屋は水の中で崩壊したのだ……)

問題の地点がどうなったかは推測するしかない。
しかし、少し離れた場所で大地が凹みつつあった。
近場に紫龍が巨人クリュティオスを倒した場所があったので、熱せられた大地にも水が流れ込む。
するとその場所から大量の水蒸気が発生した。
あっと言う間に、先程まで充満していた異様な気配が消える。
そして歩く度に水音が聞こえた。
「……」
一応、狭い範囲ではあるが問題の場所が機能停止した事で、フレアギスたちは事態の経過を見定める為その場に残り、龍星座の聖闘士と海将軍を結果として叩き出す。
呪術に詳しくない人間が居ると、正直言って邪魔だからだ。
それなのに聖闘士の方が自分に感謝の意を示したのが、彼には苛ついた。
(馴れ合う気はない)
しかし、任務である事を差し引いても、裏切る気はなかった。
危ない所を助けられただけではないと、彼は自分を納得させる。
(不思議な男だ……)
それでも気分は悪くなかった。