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続・庇護 6
巨人トゥーリオスは石像を巧みに利用して、島中に張り巡らされた呪術の紋様を読み取る。 そして彼は、他の兄弟たちを怯えさせる得体の知れない存在にも手を伸ばそうと試みた。 その力を自らに取り込めば、無敵になれると考えたからである。 |
『……』 先程まで角を輝かせて自在に暴れ回っていた異形の神は、シュラの攻撃を受けた後、ピタリと動きを止める。 (攻撃が効いたのか?) しかし、どう見ても目の前の存在にダメージが与えられたとは思えない。 山羊座の黄金聖闘士は尚も攻撃を繰り出すべきかと思った。 だが、相手は自分の放った特殊攻撃でも無事なのだ。 もう倒せる確立はゼロに近い。 (それでも闘わねばならない……) シュラが右手を構えた時、彼の脳裏に奇妙な声が聞こえてきた。 『……風。 四つの風。 マルドゥークの……業(わざ)。 契約を続行……』 「契約?」 彼には何の事だか判らない。 しかし、山羊と魚の融合体はシュラの方をじっと見た後、空間に溶け込むかのように姿を消す。 「!」 その直後、彼の聖衣は柔らかく輝く。 そして一瞬だけ全身に痛みが走った。 「……俺はあれと契約したのか?」 彼としてはさっぱり事情が分からないのだが、不意にポリュデウケースの言葉を思い出す。 『── 太古の神々の血族、スフルマシュの主よ。 お前がどれ程、その聖衣を支配しているか見せてみろ』 (では、あれがスフルマシュだったのか?) あれ程の存在が自らの聖衣に居た事に、彼は驚きを隠せなかった。 |
巨大な力の行方を見失う。 トゥーリオスは焦るあまり、闇雲に力を使い始めた。 島中に意識を走らせる。 兄弟たちが作り上げた出口。 大地のエネルギーを吸い取り続ける光の柱。 そして、忌ま忌ましい女神。 向こうも自分の存在に気付いたらしく、こちらを見ている。 そしてその隣には黄金の牡牛。 その瞬間、巨人の意識の中に黒い牡牛が出現したのである。 |