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続・庇護 5

石像は動き出す。
ゆっくりと、呪術の光を吸い込みながら……。

「ミーノス様。ここは俺が……」
そう言いながら前へ出ようとするゴードンを、ミーノスは腕を横に出して制した。
「相手がタロスのみでしたら構いませんが、今のタロスには別なモノが入っています。
ここは私に任せなさい」
そう言ってグリフォンの翼と共に天貴星の男は戦場へと舞い降りる。

「コズミック・マリオネーション!」

ミーノスの作り上げる見えない糸が、巨大な石像を縛りつけた。

巨人トゥーリオスは器を締めつけるモノに不快感を示す。
それならば、己に逆らう愚かしい人間は一気に叩き潰してしまえば良い。
激しい勢いの男(トゥーリオス)の名の如く、彼は全てを破壊することを好んだ。

そして、器に選んだ石像は面白い情報が残されていた。
巨人は何故そのようなものが読めたのかという事は分からないし、考える気はない。
とにかく呪術で書かれた情報を分かる範囲で解読してみると、この石像は島の重要地点を守護する為に作られているらしい。
その場所というのが、今まさにトゥーリオスの前に提示されているのである。
この石像の機能を使って島を完全に制圧できれば、他の兄弟たちに対して優位に立てる。
彼は兄弟達の命綱を握っていると言うことが、嬉しくて仕方なかった。

闇の中で石像が天を見上げる。
そして口を開けると、人の声とは言いにくい大音響をあげた。
威嚇と言えば良いのだろうか。
とにかくその直後、大地に張り巡らされた光の紋様が拡大したのである。
石像から発せられた光の波は周囲の紋様に流れ込む事無く、特定の場所に向かって移動していた。

別の場所にてソレントの奏でるフルートの音が響きわたる。
その音色の美しさに、冥闘士たちは注意が散漫になってしまうを警戒した。
(もしかすると女神ヘカテの加護を得ている自分では、島に張り巡らされた呪術の防衛機能は働かないかもしれない)
そんな事がちらりと思い浮かぶ。
しかし、今は異常事態が発生しているのである。
まったく別の事態が発生するかもしれない。
どちらが最優先されるのかは誰にも分からない。
(複数の呪術が同時発生して、相殺という事態は避けて欲しいものだ)
ただし、女神ヘカテの加護を持つ者を抹殺という判断が一度でも下されたのならば、その攻撃性は前回のレベルではない事は覚悟しなくてはならない。
彼は周囲の気配が騒がしくなって来た事に気が付いた。

「この気配は何だ?」
そして当然の如く、クィーンたちも異変を察知する。
「来たようですね」
先日、自分達を襲った白き気配。
ただし今回は、各々剣と盾を持つ太古の兵士の形をしていた。