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続・庇護 2

得体の知れない気配。
それも尋常ではないレベルであることは巨人たちにも分かった。
それゆえ、地上への侵攻を躊躇う者も居る。
何故なら誰かを犠牲にしなければ、その正体不明の存在が何であるのか見極めることができないからである。
そんな中、巨人族の一人トゥーリオス(激しい勢いの男)は闇の大地にうずくまる石像を見つけた。

(確か、ここら辺の筈だ……)
ミーノスは先日フェニックスの聖闘士を見つけた場所へとやって来た。
一度は冥界へ駆け下りた五人の聖闘士。
彼らが発見された場所は、もしかすると島に存在する特別な場所だったのではなかろうかと考えたからだ。
とはいえ、ミーノスは他の四人が発見された場所を聞いていない。
とにかく彼は心当たりの地点を確認しておく事にした。

(異常無しであった場合、今度は何処を探すべきか……)
時間があれば黄金聖闘士たちに聞く事も出来ただろうが、それは既に後の祭り。
この時ばかりはミーノスも異常事態の発生を願ってしまう。
そしてその祈りが通じたのか、目的の場所にはしっかりと危険が待ち受けていた。

「……」
呪術の存在を示す光の紋様。
冥闘士である彼らには光が無くても呪術の気配は分かるので、既に周囲を照らすと言う意味でしかない。
だが二人は、眼下にある火口のような大きな穴に綿密に表示される模様を美しいと感じた。
そしてその中心には、巨大な石像がうずくまっている。
光は静かに石像へと流れ込んでいた。
「やはりこの島には迷宮の番人が居たか……」
ミーノスは冷やかな眼差しで島の守護者を見つめた。

神話の時代、クレータ島は善き王ミーノスが民をまとめていた。
しかし、時代が移り変わりミーノスの名を継いだ者の中には、残虐な性質の王もまた存在したのである。
そのうちの一人が、クレータ島において至上神を象徴する牡牛を迷宮に閉じ込めるという暴挙に出た。
富と栄華の独占。
大地の女神の巫女であった妃パーシパエーもまた秘密を知る者として幽閉されてしまう。
そして牡牛を閉じ込めた建築物は『ラビリントス』と呼ばれ、そこには定期的に生贄が捧げられる。
迷宮の番人であるタロスは、その生贄が外へ逃げ出さないようにする為に配置された土人形。
しかし、傲慢なる王の野望は一人の英雄の活躍により終焉を迎える。
牡牛が開放され、迷宮を守護していたタロスが機能停止となったのだ。
それを誰が復活させたのか、このデスクィーン島にて番人は再び動き出していたのである。

(同じ名の愚か者の不始末を処理する羽目になろうとは……)
それでも先日の地下遺跡にてタロスの気配を探していたのだから、彼としては苦笑するしかない。
その時、目の前の石像がゆっくりと顔をあげてミーノスとゴードンの方を見た。
「……」
目は赤く光っており、はっきり言って石像らしくない。
「何かが入り込んだらしい」
ミーノスの言葉にゴードンは息を呑む。
目の前で動き出した石像には、尚も大地から光が流れ込んでいる。