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「……巨人族か……」 強い光を放つ柱の中で蠢く巨大な影。 紫龍は素早く龍座の神聖衣をまとう。 しかし、闇に汚されたパーツをはめた時、腕に激痛が走った。 (闇の力に支配されるわけにはいかない!) しかし、今度の敵に生身で戦うのは無茶だった。 伝説の英雄と巨人族では、あまりにもレベルが違いすぎる。 巨人は手を伸ばして紫龍を叩きつぶそうとする。 彼は素早く避けたが、巨人の攻撃によって周囲の土地が抉られ岩石が飛び散った。 紫龍は直撃こそ避けられたが、それでも無傷では済まない。 そして彼の攻撃は巨人には通用しないのだ。 どう言うわけだか全ての攻撃が受け流されてしまうのである。 (どうしたらいい……) このままでは自分の体力だけが消耗するばかり。 その焦りが隙を呼んだのか、紫龍は移動している最中、いきなり出現した呪術の紋様に足を踏み入れてしまったのである。 赤い光が紫龍に降り注ぐ。 彼は全身の力が抜けてしまい、その場に膝をついた。 そして、彼の目の前には赤い光で形作られた人影が見えたのだった。 彼が沈黙していると、人影が紫龍に問う。 その声は、東の地で紫龍の大切な土地に深い傷を負わせたことを詫びていた。 柔らかな女性の声。 一瞬、何の事だか分からない。 ゆえに彼は沈黙した。 「……」 ただ、声の主からは物凄い『力』を感じた。 (女神?) だが、自分の知っている女神とはずいぶん様子が違う。 お詫びに力を貸すとまで相手は言う。 それは願ってもない話だったが、彼にはそれ以上に気にかかる事があった。 「……貴女がもし力ある存在なら、俺よりも春麗を助けてくれないか。」 深い闇の中で彼女がいったいどうなっているのか。 あの呪術の箱が彼女に害を与えているのではないかと考えると、それだけで心が締めつけられる。 「この戦いに勝利できても……、彼女が居ないのでは意味がない」 すると人影は少しだけ紫龍に近づく。 そして力ある存在は若き聖闘士に『少女には既に素晴らしい守護がついている』と言うのだが、紫龍には何の事だかさっぱり分からない。 「えっ?」 そして その言葉の直後、人影はゆらめき周囲に拡散した。 「貴女は誰なんだ!」 その問いかけに聞こえてきた返事は、 『巨人クリュティオスと宿縁を持つ者』 という言葉だった。 そのまま光が彼の神聖衣に溶け込む。 それと同時に今まで黒く染まっていたパーツは、薄皮が剥がされるかのように闇の成分が砕けた。 龍座の神聖衣はその姿を変え、紫龍に力を与える。 もう彼の身体には、先程まで感じていた痛みは無い。 |
巨人クリュティオスは赤い光の中から現れた人間に驚いた。 その者から忌ま忌ましき女神の存在を感じたのである。 |
龍座の神聖衣が変化を遂げ、全体に赤い模様が現れる。 |