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(やはり出てきたか……) アフロディーテはその二つの気配を、とても良く知っていた。 そして懐かしさと忌まわしさが混濁する。 よりにもよって……と、言いたい。 だが、闘う者たちの気に呼ばれたというのならば、きっとあの二人が出て来る事も予想出来た。 (パトロクロス。親友の為に再び手を汚す事を選んだのか……) |
遥か昔、イーデー山にて『彼』は後の英雄アキレウスと闘ったことがあった。 それはトロイア戦争が始まる少し前の事。 英雄の横暴なる振る舞いを止めたのが、彼の親友であるパトロクロス。 武勇に優れた青年だったが、基本的には争いを好まない人物だった。 だが、義に厚い彼は親友と共に戦場に立つ事を選ぶ。 しかし、それが彼の悲劇の始まりでもあった。 |
紫龍は何度か敵の拳を受けたが、そのつど身体に鋭い痛みが走った。 それは拳の威力とは違い、全身に痛みが伝わるのである。 一方のみをガードすれば良いという問題ではない。 (……) 尚も相手は虚ろな眼差しで紫龍の事を見ていた。 (いったい何者なんだ?) 知彼知己、百戦不殆。- 敵を知り己を知らば、百戦危うべからず - 老師からそう教わったが、不気味な事に相手の闘士から意思力のような物が感じられない。 まるで操り人形と闘っているかのような気になる。 しかし、それでも強敵には違いない。 相手は紫龍の攻撃を巧みに避けていた。 「!」 しかし、激戦を戦い抜いた龍座の聖闘士は、相手の動きが奇妙であることに気付く。 ただ彼の攻撃を避けるにしても、動きが大きいのである。 そしてその割には紫龍に対する攻撃は的確。 何処かチグハグだった。 もう一つは、その闘士が紫龍の拳を避ける時、何か空気の抵抗のような物を感じるのである。 (闘気とは違うのか?) 相手が人間なのか人形なのか。 紫龍はとにかく敵を捕らえてみることにした。 危険ではあったが、このままでは埒があかない。 「廬山龍飛翔!」 紫龍の技が炸裂した時、初めてその瞳に意志のような物が見えた。 |
闇の中に浮かび上がる光の紋様。 黒の聖域にある第五の宮には人の気配はない。 いくら女神の命とはいえ、シオンはこの場所で魔鈴がアイオリアを探し出せるのか、一抹の不安を覚えた。 しかし、これ以上聖闘士の生命と引き換えに太古の女神を味方に得ては、女神アテナの威信にも傷がつく。 それは何としても阻止せねばならない。 「鷲座。我々はこれから天秤宮へ向かう。 後は頼んだぞ」 シオンはそう言うと、春麗を抱き抱えたまま出口に向かった。 魔鈴は一人残されると、建物の中を見回す。 人の気配はしない。 (さて、どう探したものか……) 彼女はとりあえず建物の様子を調べる事にした。 あまりにも静かで生き物の気配がない。 本当にこの場所に彼が囚われているのかすら、疑ってみる必要が有りそうに思えた。 |