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ひとしきりの騒ぎが終了した後のハインシュタイン城。 今度は、ほとんど物音のしない静寂の世界となった。 先程、自分の部下であるバレンタインから冥界の状態を聞かされる。 その報告は異様ではあったが彼らの言葉を疑う余地はなく、当然デスクィーン島の調査に人手を割く事に異論は無い。 そしてラダマンティスはアイアコスが自分の部下だけを派遣しなかった事に驚いた。 「我々は通行書だそうです」 ハーピーの冥闘士の言葉にラダマンティスは渋い表情になる。 関所の番人が煩いことを言ったら、通行書を置いて自分たちはさっさと島に向かえというアイアコスの判断だと分かったからである。 「一緒にいけ」 ラダマンティスは、そう答えるしかなかった。 これから島に向かう者たちの能力バランスを考えると、自分の部下たちの攻撃能力は必須だと思えたからだ。 それに島にはミーノスとゴードンが居る。 少なくとも彼らならゴードンの手助けにはなろう。 と、その時、パンドラがミューを連れて行けと言った。 「パンドラ様。それは……」 「ミューのフェアリーがあれば、島で連携して動けるはずだ。 それに私の護衛はラダマンティス一人だけで構わぬ。 今は冥界の維持を最優先しろ」 その言葉に背く事は出来ず、ラダマンティスはミューに島に行くよう命じた。 確かに異常事態の発生している島では、横の連携が取れる手段は必須である。 犠牲は最小限に留めなくてはならない。 |
島に向かう冥闘士たちが去り、静かになった城内。 闇の中で影が動く。 |
パンドラはソファに座ると、再び書類に目を通した。 ワイバーンの冥闘士は窓辺に立ち、外の様子を伺う。 「ラダマンティスも安心しろ。 私がちゃんと守ってやるぞ」 女主人の真面目な言葉に、彼は絶句してしまう。 返事のない部下の様子に、パンドラは顔を上げる。 「どうした。気分でも悪いのか?」 すると相手はパンドラの傍に寄り、片膝を床に着けて礼を示した。 「パンドラ様……。 それは私の役目です」 「それは分かっておる」 「……」 「ところでラダマンティス。 目的の聖闘士を首尾よく得られたら、誰の配下にした方が良いと思うか?」 その問いかけに、彼の胃がキリキリと痛んだ。 |
二本目の柱の消滅。 そして、それと同時にある気配をアフロディーテは感じた。 そして彼は驚きのあまり、気配のした方向を見つめる。 「また知り合いか?」 デスマスクの言葉に、ポリュデウケースも笑みを浮かべている。 『懐かしいか?』 その問いにアフロディーテは答えない。 ただ、怒りの眼差しで不死の神を睨み付けていた。 |