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初めて会う人物にミーノス以外の冥闘士たちは警戒する。 しかし、ミーノス自身は彼らが勝手な行動をしないように制止の意を示した。 「これはセイレーンの海将軍。奇遇ですね」 ミーノスは見知った人物に穏やかに話しかける。 「えぇ、奇遇ですね」 ソレントも大勢の冥闘士たちがいるという場所に来たことを気にも止めていない。 「海将軍ともあろう方が、部下も付けずにどうしたのですか?」 ミーノスの問いに相手は少々困ったような表情になる。 「……この島の周囲の海が荒れていましてね。部下には原因を調査させています。 こちらの方に強力な小宇宙を感じましたから、様子を見に来ました」 会話は穏やかなのだが、何処か腹の探り合いのような雰囲気。 そして他の冥闘士たちは初めて見る海将軍に緊張していた。 「とにかく、私は貴方がたの邪魔をしたいわけではありません。 しばらくしたら戻りますよ」 ソレントはそう言って瞬の方に近づく。 「貴方の方も、彼を見捨てにくいでしょう」 海将軍の言葉にミーノスは眉を顰める。 (冥王様の事を知っているのか?) しかし、その直後のソレントの行動は荒っぽかった。 「痛っ!」 瞬はいきなり頬を叩かれ目を覚ました。 目の前に居るのはセイレーンの海将軍。 その背後には複数の冥闘士たちがいる。 周囲は闇だったが、色々なところから放たれる呪術の光で、だいたいの人数は把握できた。 ただ、何故彼らが居るのかが分からないだけである。 「何で貴方がいるんだ?」 「原因究明のためです」 そう言いながらソレントは、自分の手を軽く振った。 「まだ惚けているのなら、意識をハッキリさせなくては危険ですね。 でも、フルート奏者に手を使わせないでください。 突き指をしたら一大事です」 瞬はさっさと立ち上がれと言われている事に気付いた。 慌てて起き上がる。 「僕なら大丈夫だよ」 どれくらい気を失っていたのかは分からないが、瞬としてはこの失態が恥ずかしかった。 「これで一安心ですね」 ソレントはミーノスに謎の言葉をかける。 ミーノス自身は、その意味が分かっていた。 冥王の依代に対する処遇。 戦場に気絶している彼を置いてゆくわけにはいかず、そして冥王がまだ彼の中に居る場合は乱暴な扱いは出来ない。 冥闘士を付き添わせるかとまで考えていたのだが、正直言えば人数は割きたくはない。 そんな状態のジレンマから、ソレントがあっさりと開放してくれたのだ。 「えっ?」 瞬は何が何だか分からず、海将軍の方を見る。 それに対して彼は、 「今は敵対してはいないのですから、彼らも見捨てにくかったみたいですよ」 と言って、しらばっくれる。 その時、瞬はとある視線を感じた。 その視線の主とはミューである。 (うわ〜っ。また甘えた事をやっているって言いたげだ〜) 実際、瞬の予感は正解だった。 ミーノスは早速、冥闘士たちに島の調査を命じる。 「最優先事項は冥界に影響を与えているモノの破壊。 巨人族との接触には注意しろ」 彼の言葉に冥闘士たちは一礼すると、素早くその場から立ち去る。 この時デスクィーン島に出現した光の柱は、先程2本目が消えたところだった。 |