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二回目の振動と突風。 それに呼応するかのように、カノンたちの周囲に浮かび上がっていた紋様が一定のリズムで点滅を繰り返す。 そして闇の中に光る二つの目は、まっすぐ彼の事を見ていた。 『……』 その目を見た瞬間、カノンは脳裏に綺麗な声を聞いた。 『……』 声はカノンの力量を褒め、その力が人であるがゆえに朽ちてゆくのを惜しむ。 だが、シードラゴンの海将軍は、その力強く堂々とした喋り方に苛立ちを覚えた。 『……』 この不快感の原因は何処から来るのか。 相手なのか、自分なのか。 尚も言葉を聞き続けていくうちに、声の主はカノンに力を与えると言い始めた。 全ての者を屈伏させる力。何者にも負けない破壊力を……。 だが、その言葉によって彼は自分の感じていた不快感の正体に気付いた。 (こいつは俺を取り込もうとしている!) 守るべきものを持たない破壊力が、どれほどの被害を生み出した事だろうか。 一度は神を唆し世界を水没させようとした身である。 再び力を求めれば、今度は直接仲間を滅ぼすことになるだろう。 だが、自分を信頼してくれた者たちを手にかける事は絶対にしない。 カノンは心地よい言葉の羅列を振り払うべく、巨人に向かって叫ぶ。 「ヒュペリビオス(傲り高ぶる男) 俺は貴様の声を聞く気はない!」 その言葉に巨人の目は見開かれた。 「アナザーディメンション!」 島自体を破壊するわけにはいかない。 そのギリギリの選択がギャラクシアンエクスプロージョンの使用を控えさせた。 だが、巨人を外に出させない為にも、カノンは渾身の力で小宇宙を爆発さる。 「これは……」 大地を伝わる振動。 ミーノスとゴードンは周囲を見回す。 いきなり冥界を思わせるかのような気配が濃くなったのである。 そして、大地には先程まで現れていた紋様とは違うモノが浮かび上がる。 「二段構えとは恐れ入りましたね」 今まで隠れていたモノの表面化。 その時、彼らの前に複数の黒い影が現れた。 |
沙織たちの方でも、目の前で光の紋様がいきなり増えたことに驚いていた。 闘士たちは沙織をこの場から離したかったが、この女神を戦列から撤退させる方が難しい事は経験的に分かっている。 目を離したら、もしかすると一人になったのを幸いに動かれかねない。 「アテナ様。失礼します」 再びアルデバランが沙織を紋様から守るべく、片腕で担ぎ上げた。 彼女は自分の手にある杖を見る。 しかし、杖は依然暗い色のまま。 そして光の紋様はミーノスたちが案内した場所が良かったのか、闘士たちの足元には現れないでいた。 |