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断片 1

冥界に突如出現した4本の柱。
そのうちの一本が、巨人族の落下と共に力の放出を停止。
しかし、柱は依然存在し、微量ながらも光が下に向かって走っていた。

「そうか……」
部下の報告にアイアコスはタルタロスに繋がる門を見た。
門は何の変化も見せず沈黙を守っている。
(何かを待っているのか?)
とにかく自分が此処から離れるわけにはいかない。
かといって、呪術で作られたであろう柱を放置することも出来ない。
(やはりデスクィーン島に冥闘士を何人か派遣した方がいいな)
多分、聖闘士か海闘士の誰かが島側の柱を破壊したのであろうが、完全破壊までには至らなかったのであろう。
何しろ呪術は素人の手に負えるものではない。
もしミーノスやゴードンが破壊したとしても、それはそれで他の柱もやらせるのは時間がかかる。
巨人族は一人ではないのだ。
「……」
数秒ほど考えた後、アイアコスは自分の部下を数名、デスクィーン島に派遣する事にした。
「それからバレンタインとルネに言って、ラダマンティスとミーノスの所の奴らを何人か借りろ」
その命令に彼の部下は一瞬戸惑った表情をした。
上司の命令ならば遂行するが、他の三巨頭の部下に同行を依頼するのは滅多にない事態。
向こうが嫌がる事も考えられる。
しかし、アイアコスは大丈夫だと笑った。
「どっちかというと奴らは関所の通行書みたいなものだ。
自分の部下が一緒なら、ラダマンティスもミーノスも煩い事は言わない」
お前たちは島に急げと言われ、冥闘士は上司に一礼すると素早くハーデス城へと戻った。

「ギガース共。 退くのなら今のうちだぞ」
アイアコスの言葉に、門の奥底から獣のような重い咆哮が聞こえてきた。

闇に吸い込まれて行く巨人ヒッポリュトス。
冥王ハーデスは消えゆく敵の影を見送ると、今度はミーノスの方へ近づく。
二人の冥闘士は片膝を付いて頭を下げた。
『ミーノス。この島には太古の影共が蠢いているな』
不愉快そうな言い方にミーノスは緊張した。
この島の現象については、冥界側の管理が疎かになっていると言われても仕方がない。
しかし、冥府の王の次の言葉は短かった。

『片付けておけ』

それだけだった。
二人の冥闘士は次の瞬間、突風のようなモノを身体に受けて後ずさりする。
冥界の王がアンドロメダの聖闘士の身体から消えたのである。
ただ、瞬の方はと言うとハーデス離脱の反動をモロに食らって、その場に倒れてしまった。

威圧的な雰囲気が消え、周囲には闇を照らす呪術の光。
ミーノスは瞬の方を見た後、辺りを見回す。
(さて、どう片付けたものか……)
結局、この島の様子を詳しく調べていなかったので、島に漂う冥界の気配は原因不明のままなのだ。
(柱は完全に消えたはずなのに、何故この場に力が満ちている?)
柱さえ消えれば結界は消滅するという当てが外れた今、今度は何が結界を維持しているのかを再び探さなくてはならない。
しかし、今度は何の手がかりも無かった。