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盟友 5

エリュシオンへ向かう時は、例えその先に何が待っていようとも覚悟の上だった。
だが、今の氷河はアイザックを探す反面、言い知れぬ不安に苛まれていた。
それは、彼がもうこの地上の何処にも居ないのではないかというもの。
少し前まで、兄弟子は破壊された大地に立っていたのだ。

(アイザック!)
あの時と同じ事がもう一度起ころうというのだろうか。
光の空間で氷河は翼や身体に抵抗を感じながらも動き回る。
浮いているような、突如としてクッションのような弾力を感じながら、徐々に下へと下がる。
だが、下に向かうにつれて、自分の身体が落ちて行くような加速を感じた。
あまりにも下がれば、そのまま穴に吸い込まれて二度と地上へは戻れないかもしれない。
そんな事を考えながらも、尚も彼はアイザックを探した。

アグリオスとの戦いが行われた場所は、光の柱が崩壊し付近の大地から白い煙が吹き出していた。
そして巨人によって強制的に開かれた穴は、少しずつ閉じようとしている。
空間が安定し始めたのである。

しばらく下がっていると、氷河は頬に冷たい感触を受けた。
氷の粒が当たったのである。
(まさか!)
彼は周囲を見回すと、上から氷が流れてくるのが分かった。
意を決して彼は駆け上がる。
すると光の中を漂っている人影を見つけた。
直感で目的の人物だと分かった彼は、素早くその身体を捉える。
そして上へと向かった。
今は彼の容体を確認する暇は無い。
下に下がりすぎているのか光の流れによる抵抗が強いのだ。
だが、ある時から光は少なくなり、今度は周囲が暗くなっていく。

(なにっ!)
氷河は頭上の光が徐々に小さくなっているのに気がついた。
もしかすると間に合わないかもしれない。
その時、彼は自分の抱えている闘士が動いたことに気がついた。
「アイザック!
気がついたか」
顔も見ずに氷河は喜びの声を上げる。
しかし、相手の言葉には苛立ちがあった。
「氷河……、俺に構うな」
「アイザック!」
「お前だけなら……間に合う……」
「断る」
「あの少女を悲しませるな……」
一瞬、氷河は沈黙した。
しかし、アイザックを見捨る事など出来ない。
そしてこういう時に限って、アイザックが絵梨衣を抱き上げていた“あの場面”を思い出してしまう。
「それについてはこっちもアイザックに聞きたいことがある。
だから何がなんでも一緒に来てもらうぞ」
氷河の強い口調にアイザックは何も言わない。
再び腕に重みを感じたので、もしかすると気を失っているのかもしれない。
(絶対にアイザックと二人で戻る!)
その時、白鳥座の神聖衣とクラーケンの鱗衣から青白い光が零れ始めた。