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そしてそれと同じ頃、カノン達の方では巨人がもうすぐ地上へ到達できるという場所に来ていた。 だが、彼の者はそれ以上昇っては来ない。 何かが地上へと続く道の出口を塞いでいたのである。 彼が巨大な手を伸ばした時、何かが鋭利な刃物となってその手を傷付ける。 獣のような叫びを聞いた時、カノン達は自分たちが間一髪のところで助かっている事を知った。 先程まで自分たちを苦しめていた呪術の紋様が、今度は逆に巨人の地上への侵入を防いでいたのだ。 とはいえ、いつまでも恩恵に預かれないことは彼らにも良く分かっていた。 「やるしかないな……」 ギャラクシアン・エクスプロージョンの使用。 下手をすれば島全体が崩壊する危険があったが、巨人を一人でも地上に立たせては意味がない。 「シードラゴン様! そのお体で闘うつもりですか」 すると彼はテティスの顔を見た後、少しだけ表情を和らげた。 「お前がいるからな」 「えっ?」 主題の分からない言葉。 何か心を騒がせる言い方に、彼女は顔が赤くなる。 しかし、当の本人は、 「あいつらに俺がわけの分からん闘士を倒すのに満身創痍になって、巨人族との闘いをお前にやらせたとバレたら俺の方が総攻撃を喰らいかねない!」 と、テティスの考えと全く違う事を言う。 「そんな事ありません」 これには彼女もガッカリしてしまった。 しかし、この判断に今度は逆に慌ててしまう。 (……。 私ったら何を期待していたの!) だが、カノンはそんなテティスの様子にを気にも止めていない。 彼は何かを吹っ切ったのか、既に連戦をする気満々だった。 「それにここまで大物相手なら、割り切って闘える」 嬉しそうに指を鳴らす筆頭将軍の様子に、テティスは説得することを諦めた。 |
すこしづつ解呪される光の柱。 そこから零れる小さな光の粒子は、暗く大きな穴に吸い込まれて行く。 周囲に風が吹き、その流れに乗って得体の知れない咆哮が轟いた。 だが、アイザックにはまだ巨人の姿は見えない。 彼は激痛に耐えながら、目を瞑って意識を集中させる。 そして闇に潜む巨人の位置を探った。 (…………?) ところが神経を研ぎ澄まそうとすると、脳裏に何かの映像が断片的に映し出される。 それは動かなくなった少女を抱きしめている一人の青年。 その傍には見知った人物によく似た人物が立っていた。 向こうは何かに気付いたのか、アイザックの方に視線を向ける。 (何だこれは……) アイザックが不覚にも動揺したその瞬間、耳元で鈴の音が響いた。 そして彼の失った筈の左目が、闇の中でこちらを見上げる巨人の姿を捉えたのだった。 |