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続・花籠 6

運命の女神たちの力を得た白鳥座の神聖衣。
キュクノスは氷河の変貌に初めて驚愕の表情となる。
そして、その口から零れたのは女神アテナの聖闘士という言葉だった。

氷河の身体から光が放たれる。
まばゆいまでの小宇宙の輝き。
彼は先程よりも力が漲ってきたのが判った。
(とにかく柱を!)
氷河は空気中に存在する僅かな水分を凍らせて、自分の背後にあるキュクノスが作った亀裂を塞ぐ。
だが、このようなものは応急措置にすぎない。
柱の中では行き場の無い光の粒子が大きくうねっていた。
そして何処からか聞こえてくる複数の声。
先程よりも氷河の耳にはっきりと聞こえていた。
『アテナの聖闘士。貴方の力を借ります』
氷河としては言いたいことは判るのだが、
(喋るのは一人にしてくれ……)
思わずにはいられなかった。

『………………』
すると女神達は氷河の考えを察知したようなのだが、
『とにかくさっさと決着をつける事。 柱の中で暴れている力を制御するのはその後』
と、あえて彼の意見を無視した。
要点だけを告げるエリスに似た声たち。
その女神たちの言葉に、
「わかった」
と、彼は短く答えた。

白鳥座の神聖衣が持つ光の翼が雄々しく広がる。
柱が放つ光が逆に弱まったのではと思える程だった。
キュクノスはこの光景に気押される。
相手が噂に名高いアテナの聖闘士ならば、全力を持って戦っても勝てるか判らない。
そう判断した彼は、柱を壊して目の前の闘士を暴走する力に呑み込ませる手段に出た。
だが、氷河も運命の女神たちも目の前にいる宿敵を逃す気はない。
光の柱を中心に、彼らの死闘は再開されたのだった。

冥界に出現した四本の柱。
そのうちの一本が音を立てて崩壊した直後、他の三本が不安定な動きを見せるようになる。
点滅を激しく繰り返したり、振動を起したりとその様子は様々。

そしてバジリスクのシルフィードが見張っている柱は縦に亀裂が入り、そこから瘴気が吹き出していた。
だが、一瞬だけ柱が輝いたと思ったら柱自体が急に一回り大きくなり、亀裂と思われていた箇所には氷の結晶が煌めいていたのである。
そして吹き出されなくなった瘴気が柱の周囲に漂い、光の粒子に凍らされるのではなく逆に少しずつ焼かれ始めた。