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「何っ!」 氷河の目の前で、キュクノスが黒い泥に飲み込まれる。 そして再び声が聞こえた。 『我ハ、トオーン(速い男)……』 その後、高笑いが聞こえてきたが、直ぐさま絶叫に変わった。 氷河はその理由を直ぐに理解した。 泥の中から現れた男はキュクノス。 ただ、顔の表面には爬虫類のような鱗が一部見えた。 「化け物を取り込んだか……」 しかし、キュクノスは氷河の言葉を嘲笑う。 神の子が巨人ごときに倒されはしないと言い、彼の態度は自信に満ちていた。 彼は一気に氷河を倒すべく動く。 こうなると巨人族を身に取り込んだキュクノスの動きは桁違いに早く、氷河は攻撃を避けるのが精一杯。 そんな彼らの横では、柱のヒビはますます長くなっていく。 (早くしないと……) ここには仲間や自分の師匠が居る。 そして聖域には、恋人が怖い思いをしながらも自分の帰りを待っていてくれている筈。 (ここで倒されるわけにはいかない!) 絶対に彼女を守るという約束を守るためにも……。 その時、光の柱に大きな亀裂が入る。 そこから零れる光が周囲の岩を溶かした。 もう一刻の猶予もない。 (一か八か、賭るしかない!) とにかく柱の亀裂部分を凍りつかせなければならない。 氷河はキュクノスの攻撃を横に避ける。 その時、キュクノスが咄嗟に彼の身体を掴み、柱の方へと投げてしまう。 『死に急いだか』 そして氷河の身体が柱とぶつかろうかとした瞬間、大量の白き光が氷河を包み込んだ。 |
「強力な援軍ですか?」 |
眩しいまでの白い光。 |
『仕方のない奴らだ』 |