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暗い場所で仄かに見える数々の小さな光。 絵梨衣はそれが花である事に気付くのに時間がかかった。 「ここは……?」 首を動かして辺りの様子を見る。 だが、起き上がろうとすると体中が痺れて動くことが出来ない。 天を見れば無数の星たちが光り輝いている。 (綺麗……) 怖いくらいに美しい夜空。 何処からか漂う花の香りが、彼女の身体の痛みを少しだけ和らげてくれた。 彼女は手首を動かして自分が纏っている黒い布を掴み、大きく深呼吸をする。 この時、彼女は気付く。 自分が身につけていた腕輪が無くなっていたのである。 (もしかして、あの時!) 全身を貫くような痛みの中で見た腕輪の崩壊。 だからといって自分の傍に女神の気配はない。 彼女は急に心細くなって、思わず涙を零してしまう。 その時、何処からか鈴のような音色が聞こえてきた。 (何の音?) その音は徐々にはっきりと聞こえてくる。 「誰か……いますか……?」 起き上がることが出来ない今、声を出すことでしか自分の存在を主張できない。 それでも今の絵梨衣には声を出すのも辛い事。 すると、鳥の羽ばたく音が近くで聞こえ、一羽の白鳥が絵梨衣の顔を覗き込んでいた。 「白鳥さん……?」 柔らかい光を放つ白鳥は、絵梨衣の身体に身を寄せる。 自分が一人ではないことに絵梨衣もまた安堵の笑みを浮かべた。 だが、この緩やかな時間は、瞬く間に終焉を迎える。 『何度言えば判るんだ!』 聞いた事のある男性の声。しかも怒っている。 そしてその後に聞こえたのは、激しく鳴り響く鈴のような音色。 絵梨衣は何事かとビックリしてしまう。 『とにかくお前たちが関わる必要はない』 そう言って草むらに横になっている絵梨衣の前に現れたのは、銀色の髪をもつ青年。 「あっ!」 顔だけは知っている青年の登場に、彼女は呆然としてしまった。 |
柱から現れた人物は、問答無用で氷河を攻撃する。 その拳の威力は凄まじく、拳圧で崖の壁に幾つもの大穴があく。 そしてその後には砂塵が舞い、相手の姿は砂の煙幕によって掻き消された。 氷河は巧みに相手の攻撃を避けるが……。 「何っ!」 突如、相手は氷河の目の前で拳を大地に打ちつける。 そして大地には亀裂が発生。 其処から噴水のように吹き出した海水が、光の柱に重なる。 相手は薄く笑いながらも氷河の動きに対して警戒し、柱を凍らせ光を封じ込めたのだ。 其れだけでも力の証明が出来そうだが、相手はもっと理解しがたい行動を起す。 柱の根元に自分の一撃を与えたのである。 亀裂が柱に長くまっすぐに入る。 『しばらくすれば、このヒビは柱を壊す。 そうなれば力ある光は、この島中に拡散する。 暴走した力は……、この島を破壊し尽くすだろう』 謎の青年はこの状況を楽しんでいた。 |