黒い空間に放り出された瞬は、どうしたらハーデスから自分の肉体を奪還できるのか悩んでしまう。
聖戦の時は少なくとも自分の意識を侮り、簡単に潰そうとしていた。
だが、今はあの時と違いハーデスは自分との関わりを一切断ってしまっている。
(何とかしないと!)
女神エリスの依代である少女の時ように、肉体から弾き出されているのではないか。
しかし、自分が痛みを感じているという事は、そうではないとも思える。
(冗談じゃない。僕は立ち止まってはいられないんだ)
同じように戦っている兄や仲間の姿が脳裏を過る。
そして、瞬は不意に泣いている姉弟子の姿を思い出す。
死にに行く様なものだと、聖域へ向かうことを止めに来てくれた彼女。
(……)
でも、その彼女はもう何処にも居ない。太古の女神の生贄に捧げたと言われた。
(それが運命だと言われたって、諦められるわけがないだろ!)
否定的な感情を振り払うかの如く叫んだ時、彼の周辺の様子が一変した。
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