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息が止まるかと思うほどの激痛。 だが彼は、この一撃を避けるわけにはいかなかった。 一輝はギルティーの拳を体に受け、過去の忌まわしい記憶が蘇る。 そんな彼の表情に、相手は薄く笑っていた。 「一輝!」 エスメラルダは思わず声を上げる。 だが、彼女が一輝に駆け寄りそうになるのを貴鬼が止めた。 「エスメラルダさん。近づいちゃ駄目だ!」 彼があえて攻撃を身に受けたのは、背後にいるエスメラルダたちを守る為。 今戦っている場所では、エスメラルダも貴鬼も直線的にしか動けないのだ。 そして貴鬼がエスメラルダを連れて離れようとすると、ギルティーは素早く拳圧で付近の岩を砕く。 とっさに貴鬼がサイコキネシスでエスメラルダの事を守ったが、飛び散る小石の様子もさることながら 、抉られた岩壁の凄さに彼女は動けなくなってしまう。 『逃がさぬ……』 ぞっとするようなギルティーの声が聞こえた時、エスメラルダはパンドラから預かった小袋をきつく握った。 |
(パリスを捉える!) 瞬が滅びの王子に手を伸ばす。 その刹那、パリスのネビュラチェーンは二人の想像を超えた行動をした。 「な……なんで……」 自分の腕の中に倒れこむ王子。 その背後には二本のチェーンが深々と突き刺さっていた。 「パリス!」 そのチェーンはパリスと一緒に自分を刺そうとしていたのだ。 謎に満ちた黒いアンドロメダの聖衣は、本来守るべき闘士ごと敵を倒すという行動を起こしたのである。 だが、瞬の神聖衣に傷一つ付いていない。 それに冥王の影響力の下にある為か、パリスの闘衣とネビュラチェーンは徐々に石化し始める。 (まさか……これが聖衣の反抗なのか?) 瞬は何が何だか判らないまま、パリスの体を支える。 そんな彼の耳に、王子の言葉が聞こえてきた。 『兄上……』 瞬は驚きのあまりパリスの顔を見ようとする。 その時、生暖かい風と共に獣の唸り声が聞こえ、瞬のネビュラチェーンが防御の体制を取った。 聞こえてくる声は、パリスへの怒りに満ちていた。 そして彼自身の脳裏に意外な存在の声が響く。 |
仮面を付けていない女性の聖闘士。 |