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結界 4

奇妙な眩暈。
一輝は自分達が他のメンバーと引き離された事に気付く。
「ここは?」
エスメラルダはキョロキョロと周囲を見回した。
周囲は闇が深く、自分達が何処に居るのかがサッパリ判らない。
唯一判っているのは、床が石畳らしいという事だった。

「変な所に来ちゃったね」
背後に聞き慣れた声。 振りかえると貴鬼が後ろの方を見ていた。
その時、三人の居た通路に突風が吹く。
耳に届く獣の唸り声の様な音に、エスメラルダは身を固くした。

(何かが近くにいる)
一輝はその気配を感じて、抱えていた彼女をおろす。
「貴鬼。エスメラルダを連れてテレポートは出来るか?」
彼の問いに貴鬼は困った表情になる。
「やれない訳じゃないけど、上手くムウ様たちの所へ連れて行けるか自信がない……。
さっきからムウ様を探して呼びかけているのだけど、返事が無いんだ」
この返事に一輝は眉を顰めた。
無闇にテレポートをした事でエスメラルダと貴鬼が離れたら、今度こそ取りかえしがつかない。
(俺が守らないと……)
あの時の喪失感を再び味わうくらいなら、目の前に出てくる敵を全て滅ぼす方が良い。
彼は覚悟を決めると、エスメラルダには貴鬼と手を繋いでいろと言った。
そして自分から離れるなと付け足す。
エスメラルダは表情を固くしながらも、彼の言葉に頷く。
その時、貴鬼が手を繋いでいる彼女の背後をじっと見た。
「?」
エスメラルダの傍に誰かが居た様な気がしたのである。
だが、何度見直しても誰も居ない。
「どうしたんだ?」
一輝に尋ねられたが、彼は何でもないと答えるしかなかった。

そして三人が移動しようとした瞬間、光が石壁を伝って走り抜けた。
「!」
あまりにもビックリしたのか、彼女は言葉が出せずに繋いでいる貴鬼を手をぎゅっと掴む。
そして光は周囲を照らし、彼らは自分達が石造りの建物の中に居るという事を知った。
光は複雑な紋様を示し、石造りの空間を照らす。
この時、三人の耳に規則正しい音が聞こえてきた。

「俺の後ろにいろ」
そして一輝は、やって来るモノの気配に緊張した。
(この感じは……)
強烈な不安と危機感。
だが、既に相手は自分たちの目の前にまで来ていた。
「……」
そして三人の目の前に現れたのは、見た事も無い異形の鎧を纏った人物。
だが、その鎧の模様に一輝とエスメラルダは見覚えがあった。
「貴様……」
その者の表情はマスクの陰になってよく判らない。
相手は右手を前に出す。
『久しぶりだな……』
その声を聞いた瞬間、一輝は全身から怒りが溢れだしそうだった。
「ギルティー……」
これは宿命なのか。
自分の師匠だった男の登場に、彼は拳を固く握った。