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結界 3

自分を取り巻く黒い煙。 呼吸が苦しい訳でなく、身体も拘束されているという状態ではない。
瞬は落ち着きを取り戻すと、自分を取り巻く黒い煙を払うべくネビュラチェーンで防御の体勢を取った。
すると煙は彼の発する小宇宙に反応し、チェーンの動きに流される。
そして黒い何かは気流を作り霧散した。

「瞬……」
黒い煙の中から現れたアンドロメダの聖闘士の姿に、他の聖闘士たちは絶句してしまう。
瞬の神聖衣が、黒い模様を浮かび上がらせ、そしてその形態を変化させていたのである。
「何……これ??」
この現象には瞬自身も驚くしかない。
「瞬は冥王から隠れ兜を受け取っていたのではないのですか?」
沙織の言葉に、瞬はエリュシオンでの出来事を思い出す。

『世話をかけたな。それを上手く使え』

冥王の言葉が彼の脳裏に蘇る。
「冥王の隠れ兜は、呪術に対しても身を隠す事が出来ます」
沙織の言葉に、瞬は自分の立っている場所を確認した。
足元では呪術の模様が光を放っている。
「これで少しは動けるでしょう」
ミーノスの言葉に瞬は、はっとする。
冥王の隠れ兜が神聖衣と同化したという事は、この呪術だらけの状態でも自分だけは動きを制限されないという事。
「それなら、僕が春麗さんの持っている箱を引き受けるよ!」
瞬のこの意見に、沙織は首を横に振った。
「何故!」
「瞬、忘れてしまったのですか?
隠れ兜は確かに呪術に対抗出来ますが、貴方の神聖衣が星矢のと同じ行動を起こさないと言い切れますか?」
いきなり反抗されるかもしれない。
そしてその不安材料を抱えたまま呪術媒体に近付く事は、別の危険を呼ぶ事も考えられた。
それは強い力を持つ隠れ兜が、箱に封じられた呪術を無効化してしまうと言う事。
それでは何もならないのである。
「……。判りました」
そこまで言われると、瞬としては納得するしかなかった。
彼自身、隠れ兜がどのような力を持つのか全てを知っているわけではないからだ。

その時、未だにやって来ないミロとシャイナを不審に思い連絡を取ったムウが大声を出す。
「それは本当ですか!」
いきなり大声を出されて、春麗は箱を落としそうになった。
慌てて、ぎゅっと抱きしめる。
「何かあったのか!」
シオンに言われてムウは、困惑した表情でミロからの情報を口にした。
「ミロが4本の光の柱を見に行ったそうです」
ところがその中に、ペガサス・アンドロメダ・キグナス・ドラゴンらしき模様の彫られた箱が見えたという。

(結界の媒体は、神聖衣となった聖衣の影か?)
シオンはそう思った途端、自分の考えそのものに首を傾げた。
デスクィーン島にあるのは暗黒聖衣であって、影では無い筈。
ならば所有者に調べさせるのが、それの正体を見極めるには都合が良い。
シオンの言葉に、四名の少年は頷いたのだった。