黒の神殿に到着した矢は最奥の壁に刺さり、ようやく飛ぶ力を失う。
それと同時に、神殿内部では呪術の紋様が光を放ち、今度は昼間の様に明るい。
「これは凄いな」
デスマスクはニヤニヤと笑いながら、天井近くに突き刺さっている白銀の矢を見上げた。
「これは聖域の秘密兵器か?」
しかし、アフロディーテは尚も厳しい眼差しで矢を見上げる。
(確かに呪術の視覚化は成功したが、この空間を維持している呪術媒体を破壊させなくては何にもならない……)
だが、広範囲に張りめぐらされた呪術を維持するものが、この場合物質的に大きなものである必要は無い。
力ある存在であれば、小石でも構わないのだ。
それを呪術に詳しくない聖闘士が見付けられるのか?
状況は依然として厳しかった。
呪術の影響のない場所を選んで通ったお蔭なのか、惑わされる事なく二人は地上へと向かう。
それ故か、同じ島に居る所為なのか逆に沙織や仲間の小宇宙を感じる。 これは相手も同じだった。
「ミロとシャイナがこの近くに居るようです」
ムウの言葉に、沙織達は安堵する。
だが、いくら小宇宙によるテレパシーが聖闘士同士で可能でも、得て不得手はあったりする。
ゆえに殆ど一方的にムウが話を進める事となった。
彼の強力な超能力なら何とか話を進められるからだ。
同じように超能力を持つミーノスでは、事態が混乱の一途を辿る事がありありと判っていた。
シオンは只、その様子をじっと観察する。
ムウからの情報で、沙織が島に来ているという事にミロは愕然とする。
自分達の不手際が原因で、女神をこのような危険地帯にやって来させた事にショックを受けたのだ。
その様子が向こうに伝わったのか、ムウからフォローとは言い難い慰めの言葉をかけられる。
「動揺するのは後にしなさい。
そう、女神からの伝言です。」
慈悲深くない台詞が、今は逆に有り難かった。
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